鹿島の壁面吹付塗装ロボ、実現場の適用で人工3割の削減と熟練工と同等品質を確認:ロボット
鹿島建設は竹延と共同開発した塗装ロボットを実現場に適用し、その性能を確認した。施工ロボットの導入により、人工換算で約3割を削減し、施工品質もベテラン職人と同程度だと証明された。
鹿島建設は2020年11月、竹延と開発した壁面吹付塗装ロボットを実工事に初適用したことを明らかにした。ロボットを適用することで、熟練塗装工と同等の塗装品質を確保しながら、塗装作業全体に要する人工を人による作業と比べて、約3割カットすることに成功した。
ロボット施工でも、熟練塗装工と同等の施工水準
ロボット開発の裏側には、一般的な室内での壁面吹付塗装作業では、塗装面積の広さに加え、塗装時に塗料の垂れが生じやすく重ね塗りが必要となるため、長時間かつ繰り返しの作業が現場作業員の重荷となっていたことがある。
一方で鹿島建設では現在、全社を挙げて取り組んでいる「鹿島スマート生産」で、「作業の半分はロボットと」をコアコンセプトの一つに位置付けており、繰り返しや苦渋を伴う作業や自動化で効率や品質にメリットが得られる作業などを対象に、自動化・ロボット化を進めている。室内での壁面吹付塗装作業も上記の理由から該当するため、壁面吹付塗装ロボットを開発するに至った。
実用化したロボットは、離隔センサーで壁との距離を一定に保ちつつ、移動しながら吹付ノズルを上下して壁面を塗装する。一定速度と一定角度を保ちつつ、塗料の吹付ノズルを動かすことにより、1回の吹付で膜厚を確保し、重ね塗りは不要となる。作業量は1時間あたり、110平方メートル以上で、熟練塗装工と同じほどの高い塗装品質を実現した。
作業の半分はロボットとの言葉通り、端部などロボットでの塗装の難易度が高い部位は、従来と同じように人が作業することを前提に設計しており、開発期間の短縮や製作コストの抑制、構造の簡素化、操作の簡略化などにもつながった。また、吹付塗装の機材は、汎用品を採用することで、部品交換などの保守も手間いらずだという。
開発の際には、竹延が以前から取り組んでいた熟練塗装工が持つ感覚的な技(暗黙知)の数値化やマニュアル化などのノウハウが採り入れられている。
現場での適用は、兵庫県内の建築現場で、ALC壁(475平方メートル)の部分塗装を行った。下地処理や養生などを含む塗装作業全体の人工は、従来の人による作業が4.8人日だったのに対して、3.2人日と約3割削減。塗装品質についても、熟練塗装工と同等の水準を確保したことが確認された。
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