住宅の長寿命化に役立つCjK部材とは?長住協:住宅ビジネスフェア2020
長期使用住宅部材 標準化推進協議会は、住宅の長寿命化と建物のメンテナンスを容易にするために、住宅部材の標準化を推進している。
長期使用住宅部材 標準化推進協議会(長住協) 標準(共通)化評価委員会 委員長 津下清志氏は、住宅の設計・施工や修繕、管理に役立つソリューションが展示された専門展「住宅ビジネスフェア2020」(会期:2020年9月24〜25日、東京ビッグサイト)で、「長期使用対応部材(CjK部材)とは?」と題した講演を行い、CjK部材の長所や一例としてF型桟がわらの粘土瓦について紹介した。
CjK部材は補修部材の管理費カットで効果
長住協は、経済産業省が管轄する研究会の提言に基づき、住宅部品・部材の標準化を推進する団体として設立された。大手住宅メーカーや建材メーカー、住宅設備機器メーカーが正会員として参加し、住宅部材の標準(共通)化を実現することを目的に活動している。正会員は26社で、関連団体には住宅産業協議会とプレハブ建築協会がある。
CjK部材とは、メンテナンスを容易にするために互換性を備えた住宅部材を指す。津下氏は、部材に互換性を付与するメリットについて、カセットコンロ用燃料容器の事例を通して説明した。
「カセットコンロとガスボンベは1991年に、日本工業規格(JIS)によって規格が定められたが、互換性までは定義されなかった。結果、1995年に兵庫県南部地震が発生した際に、現地に救援物資としてカセットコンロが提供されたが、互換性が無かったため、被災地のガスボンベを装着できない事態が生じた。そこで、政府は、ガスボンベとカセットコンロの規格を統一する必要性を認識し、1998年に両製品の規格を見直した。ガスボンベは、ボンベの直径や全長、切り込みサイズを規格化し、どのカセットコンロでも他メーカーのガスボンベを使えるようにした。このように、部材に互換性を備えることで、特定の製品が無くても、他社の製品で補修が行えるようになる」(津下氏)。
また、互換性がある部材は、保有する補修部材の品種を削減し、管理費カットを果たせる他、特定の部材・部品メーカーが倒産しても、他メーカーの製品で代用できる。
F型桟がわらの粘土瓦をCjK部材として標準化する際には、全国陶器瓦工業組合連合会の担当者が参加し、全瓦メーカーが販売しているF型桟がわらの粘土瓦をチェックして、共通化の指標となる基準書を作成した。
現在、標準寸法のタイプは、「F形U 山幅広タイプ(FUA)」「F型U 山幅狭タイプ(FUB)」「F形フルフラット山有タイプ(FFA)」「F形フルフラット山無タイプ(FFB)」の4種類。津下氏は、「当初、粘土瓦の標準の寸法は1種類にする予定だったが、伝統的な瓦メーカーが金型を作り替えるコストや手間を考慮して、4種類に決定した」と述べ、説明を終えた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コロナ禍で新築と中古の住宅市場は低迷するも、リフォームのニーズは増加
LIFULL HOME'S総研は、コロナ禍における新築住宅と中古物件の市場動向を調査した。結果、新築と中古の住宅市場ともに、売上が低迷していることを明らかにした。一方、新型コロナウイルス感染症の影響で、住み替えしにくい状況から、居住性と機能性を向上する改修ニーズは高まっており、リフォームを検討するユーザーが増加していることも判明した。 - 1棟ごとにカスタムメイドする「邸別生産」で、AIを自社構築した積水ハウスの挑戦
ウェブサイトに掲載した記事を印刷しても読みやすいPDF形式の「電子ブックレット」にまとめました。無料のBUILT読者会員に登録することで、ダウンロードすることができます。今回、紹介するのは「邸別自由設計」を家づくりのモットーとする積水ハウスが、なぜ住宅の製造現場にAIを導入したのか、独占インタビューのまとめです。 - 住友林業が「W350計画」で目指す“環境木化都市”と実現に必要な木化技術とは?
住友林業が展開するビジネスの根源には、植林・育林の技術にある。同社が掲げる「W350計画」は、この技術をさらに前進させ、“環境木化都市”の実現を目指す研究開発構想だ。気候変動の抑制に向けた建築時の総排出CO2「エンボディド・カーボン」の減少を目標とし、同社では「MOCCA(木化)」事業を進めている。MOCCAでは、木材を使って耐久性が高く快適な建築空間を実現すべく、耐火部材の開発やゲノム選抜育種などに取り組んでいる。 - 横浜市庁舎にも採用された“ダンボール製ダクト”、金属にも劣らない性能を証明
竹中工務店は、金属ダクトにも劣らない気密性や不燃性などを有するダンボール製のダクトを開発し、このほど研究機関により30年の耐久性能が証明された。直近の採用実績では、2020年1月に竣工した横浜市新市庁舎などにも適用されている。 - RC造やSRC造、CFT造などのコンクリート構造物を無振動で切断する新工法、戸田建設
戸田建設は、日酸TANAKAと岡谷酸素と共同で、RC造やSRC造、CFT造などのコンクリート構造物を無振動で切断する「マスカット工法」を開発した。戸田建設は、東京中央区で施工中の新TODAビル計画に伴う解体工事に新工法を適用している。 - 中京圏初の木質ハイブリッド構造のマンションが完工
清水建設の設計・施工により、名古屋市千種区に中京圏初となる木質ハイブリッド構造の中層マンションが完工した。外観から斬新な構造形式を認識でき、居住空間は自然のぬくもり、優しさを実感できる木質空間とした。 - withコロナに“地方工務店”はどう向き合ったか?旧態とITのハイブリッド式で乗り切れ
コロナ禍は、漠然と考えられていたIT化を一気に進める契機となり得る。茨城県下妻市に本社を置き、木材店から出発し、良質な木の家づくりにこだわる柴木材店は、対面での活動が制限されるなか、ITを使って業務をどうこなし、業績を確保したのかを講演で説いた。