熊谷組とNECが“ローカル5G”活用で、VR遠隔操作の無人化施工に成功:5G
熊谷組とNECは、ローカル5Gを活用し、4K映像と建機の傾きなどといった動きの情報伝送、VRでの遠隔操作を組み合わせた無人化施工の実証実験を行った。低遅延で大容量な通信を可能にするローカル5Gを活用することで、ネットワークの帯域不足といった従来の課題を解決し、4K映像や動きなど多様な情報をリアルタイムに伝送することで、実際に建機に搭乗したときに近い環境を構築することを目指す。
熊谷組とNECは2020年12月10日、災害現場などのネットワーク対応型無人化施工を想定した実証実験を実施し、ローカル5Gを活用した4K映像の伝送と重機模型のVR遠隔操作に成功したと公表した。
ローカル5Gで建機搭乗時と同等の環境を再現
実験では、建設機械の映像をVRヘッドマウントディスプレイ(HMD)に表示すると同時に、操縦席が取り付けられたモーションベースで、建機の傾きや振動などの動きを再現した。映像に加え、建機の動きも、ローカル5Gを活用して高品質かつリアルタイムに伝送することで、傾斜地で運用する場合でも、実際の搭乗操作に近い感覚で遠隔操作することが可能になる。
熊谷組が無人化施工に取り組む理由は、近年、自然災害現場での無人化施工は、2次災害を防ぐため、極めて有効な手段と見なされていることが背景としてある。また、国土交通省が、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」などの施策を建設現場に導入することで、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指すi-Constructionを推進していることも要因の一つ。
こうした中、熊谷組は、VR技術の開発など無人化施工の実用に向けた取り組みに着手しており、今回NECと連携することで、ローカル5G環境下における無人化施工の実証実験を行った。
実験では、オペレーターが装着するHMD、操縦席が取り付けられたモーションベース、360度カメラと加速度センサーが取り付けられた重機模型で無人化施工のシステムを構築した。オペレーターは、操縦席でHMDを装着し、建機をリモートで操縦した。遠隔操作された建機を通じて、4K映像や傾き・振動など動きの情報を含むパケットが、ローカル5Gのネットワークを通じてリアルタイムに遠隔操作座席へ転送された。
実証実験の現場は、神奈川県川崎市にあるNEC玉川事業場内のローカル5Gラボに、仮想現場環境を用意した。VR技術や360度及び4Kの映像、2K映像の伝送をローカル5G上で検証し、大容量、低遅延かつ多次元的な通信がリアルタイムで可能なことが証明された。
熊谷組とNECは今後、実現場での運用に向けて、ICTを活用した無人化施工の取り組みを加速させていくとしている。
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