層間変形角1/200radまで変形しない座屈拘束型の耐震ブレース、青木あすなろ建設:非住宅建築フェア2020
青木あすなろ建設は、2017年に耐震ブレース「折り返しブレース」を開発した。折り返しブレースは、軸降伏変位が従来ブレースと比較して2.5倍あるため、建物に少量で偏心配置しても、耐震性を確保できる。開発当初は、自社の設計・施工物件にのみ適用していたが、近年は、他の建設会社にも販売している。
青木あすなろ建設 東京建築本店 設計部 担当課長 竹内健一氏は、非住宅の設計・施工や修繕、管理に役立つソリューションが一堂に会した専門展「非住宅建築2020」(会期:2020年9月24〜25日、東京ビッグサイト)で、「層間変形角1/200radまで降伏しない座屈拘束型の新しい耐震ブレース」と題した講演を行った。
純ラーメン構造と比べて使用鋼材量を約20%削減可能
折り返しブレースは、断面の異なる芯材、中鋼管、外鋼管を一筆書きの要領で折り返して、互いに接合させることで、実際の部材長さが見掛けより2.5倍長くなっている。芯材と中鋼管はエンドプレートを介して接続し、中鋼管と外鋼管はリング型のエンドプレートでつなげている。
竹内氏は、「ブレースの軸降伏変位は、降伏ひずみと部材長さの積で決まることから、実際の部材長さが見掛けより2.5倍長い折り返しブレースは、軸降伏変位が従来ブレースと比較して2.5倍あることになる。折り返しブレースの軸耐力は断面積を調整することで高められるため、ブレースに応力が集中して、フレームの耐力が作用しない一般のブレースとは異なり、フレーム耐力が効果的に働く」と説明した。
続けて、「折り返しブレース全体に圧縮荷重がかかる時には、芯材と外鋼管は圧縮材の役割を果たし、中鋼管は引っ張り材として機能するため、圧縮力を受けた芯材の座屈しようとする力を中鋼管の座屈拘束効果によって抑える。折り返しブレースは、圧縮力と引っ張り力に対して、同等の耐力を備えており、部材種別はBAランクだ」と付け加えた。
青木あすなろ建設は、断面寸法が175×175×7.5×11ミリのH形鋼を用いた従来ブレースと、芯材に断面寸法が175×175×7.5×11ミリのH形鋼を使用し、断面寸法が191×191×9×6ミリの中鋼管と213×213×9×6ミリの外鋼管を組み込んだ折り返しブレースの性能を比較する確認試験を行った。試験では、油圧ジャッキで応力を両ブレースにかけ、耐力を測定した。結果、従来ブレースは層間変形角500分の1で折れ曲がったが、折り返しブレースは層間変形角が200分の1程度になるまで変形が生じなかった。
「折り返しブレース構造は、建物に少量設置しても応力が集中せず、偏心配置した場合でもねじれの影響が少ないため、取り付けの自由度が従来ブレースより上がり、純ラーメン構造と比べて使用鋼材量を約20%減らせる。また、8階建ての事務所ビルに折り返しブレースを適用した際には、建物の3方面に設置する偏心配置で十分な耐震性を確保した」(竹内氏)。
折り返しブレースの提供方法について、竹内氏は、「折り返しブレースは、青木あすなろ建設の設計・施工物件で使用しているだけでなく、他社の設計・施工物件に対しても販売している。設計は、青木あすなろ建設が担う場合と、他社の設計者が設計し、青木あすなろ建設が設計指導または設計補助を担当するケースがある。施工は、青木あすなろ建設が対応する他、他社が工事全体の施工を行い、青木あすなろ建設がブレースの製作だけを受け持つこともできる」と述べた。
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