芝浦工大、ボルトの緩みを低コストで定量評価できる新手法:施工
芝浦工業大学は英エジンバラ大学との国際共同研究により、ボルトの緩みを低コストで定量評価できる手法を開発した。ボルト先端部の周波数と軸力の相関から、ボルト先端部の緩みの検出する。
芝浦工業大学機械機能工学科の細矢直基教授/英エジンバラ大学工学部のFrancesco Giorgio-Serchi博士らの研究グループは、ボルトの緩みを低コストで定量評価できる手法を開発した。人には聞こえない超音波レベルの振動計測を行い、ボルト先端部の周波数と軸力の相関からボルトの緩みを検出する手法だ。プロセスが簡便で、汎用の振動試験装置を使えるため、低コストでの計測を可能とした。
同グループによる新手法では、超音波領域の音を使うことで、従来の測定方法では分からなかったボルトの微妙な緩みを検知可能としている。測定方法としては、対象物の幾つかのポイントをたたき、軸力に対するボルト先端部の固有振動数の変化の計測によって、軸力を評価する。
実験の結果、ボルトが締まっているときは先端部が細かく速く揺れるため固有振動数が高く、緩むことで大きくゆっくり揺れるため固有振動数が低下する。つまり、ボルト先端部の固有振動数と軸力には相関関係があり、軸力の減少に伴って振動数が減少することを確認できたとのこと。
ボルトはいすから飛行機、土木構造物に至るまでさまざまな物に使用されており、従来の測定方法では正確な緩みの検知が難しかったため、緩みが原因の事故が起きている。従来手法のハンマリングテストでは、点検者が耳で判断するため技量や熟練度によるばらつきが出てしまい、正確な計測や緩みの度合いの定量的な評価が難しかった。また、トルクテストでもねじ着座面の摩擦特性が変化するため、軸力を正確に測定することが難しいとされてきた。
新手法により、緩みを検知し事故を未然に防ぐだけでなく、遠隔計測および自動化による定量的評価の実現や、本手法を活用した検査の実現に向け、システムづくりをしていくという。また、低コストであることから発展途上国への実用化も考えられる。
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