ZEBオフィスビル実現に向け、自律式風速一定器具を新菱冷熱ら4者が共同開発:ZEB
三菱地所設計、新菱冷熱工業、芝浦工業大学、協立エアテックは、東京都千代田区で計画されているオフィスビルの消費エネルギーゼロ「ZEB」を目指し、風速を一定に維持する空調器具「Air-Soarer」を開発した。
三菱地所設計、新菱冷熱工業、芝浦工業大学、協立エアテックは、自律式風速一定器具「Air-Soarer」を共同開発した。Air-Soarerを導入すると、吹き出し口が壁に設置され、天井面に沿って部屋全体に空調空気を行き渡らせる“コアンダ効果”が実現する。
室奥まで空調空気を到達できる“コアンダ効果”
Air-Soarerは、空調機の吹き出し風量の増減に応じ、自律的に開閉具合を調整することで、一定の吹き出し風速の維持が可能となるシステム。Air-Soarerを利用した変風量コアンダ空調システムは、階高を抑えて建設コストの低減を図れるだけでなく、省エネルギーおよび室内の快適性を実現する。
主な特長としては、空調の吹き出し口を天井に設けるのでは無く、壁面の吹き出し口から噴出するため、天井裏のダクトは不要となり、階高が低くて済む。
気体の噴流が壁面に吸い寄せられる“コアンダ効果”を利用して、吹き出し空気を天井面に這(は)わせて部屋に行き渡らせるため、気流の落下を防ぎ、室奥まで空調空気を到達させることが可能だ。コアンダ効果を得るには、通常は定風量が求められるが、Air-Soarerでは風量を減らしても風速は維持される。
開発の背景には、東京都千代田区で建設を進めている中規模事務所ビルで、ZEB(Net Zero Energy Building)を実現する目的があった。建設プロジェクトの企画構想の段階から、設計(三菱地所設計)、施工(新菱冷熱工)、学術(芝浦工業大学 建築学部 建築学科・秋元孝之教授)、メーカー(協立エアテック)の4者が産学連携をし、汎用性の高い新技術として開発。
各役割は、三菱地所設計がシステム考案と検証全体のオーガナイザー、空調設備機器メーカーの協立エアテックが機器の開発とカスタマイズ、新菱冷熱工業がCFD(気流解析)による効果予測に加え、新菱冷熱中央研究所で実大実験を行い、実物件へ導入後のコミッショニングも手掛けた。芝浦工大の秋元孝之教授は、被験者実験による熱的快適性の検証と知的生産性や省エネ評価を担当した。
Air-Soarerは、当初はオフィスでの採用を想定していたが、それにとどまらず大規模空間への適用も検討されている。今後は、意匠性の向上を図りつつ、多様な用途で設計のバリエーションを広げていくとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東京・大手町、地下に広がる冷暖房システムが進化
東京都千代田区のビジネス街、大手町エリアの地域冷暖房システムを支える新たな地下プラントが完成した。大手町・丸の内・有楽町エリアを中心にエネルギー供給システムを運営する丸の内熱供給が運営するプラントで、大手町パークビルや周辺のビルや設備に冷水や温水を供給することができる。水槽を活用したコージェネレーションシステムを導入するなど、エネルギーの高効率化を図ったのが特徴だ。 - 低層に絞って空気誘引する省エネ空調「Air-Lo3」、新日本空調が市場投入
新日本空調は、低層の作業域を空調する大空間向けタスクゾーン省エネ空調「Air-Lo3(エアロスリー)」を新たに開発した。送風エネルギーを最大で40%以上も削減できると期待されている。 - 空調エネルギーを60%削減、新たな外気処理システムと断熱材を実用化へ
竹中工務店がビルのZEB化に大きく貢献するとして開発を進めている「高効率調湿外気処理ユニット」と「高断熱ファサード」に実用化のめどがたった。2016年2月をめどに実用化する計画で、さらにこの2つを組み合わせたシステムを事務所ビルに構築し、空調の一次エネルギー消費量を60%以上削減できることを検証する。 - 「暑い」「寒い」をこっそり申告できる、個人に寄り添う空調システム
アズビル、村田製作所、戸田建設は、「暑い」「寒い」といった体感情報を専用のカード型デバイスなどで申告できる空調システムを開発した。室内の気温と申告の内容に応じて、空調を最適に制御できるという。