コンクリート打設後の散布でも固着する新たな打継ぎ処理剤、清水建設:製品動向
清水建設は、日本シーカとともに、レイタンスの除去作業を円滑にする打継ぎ処理剤「シーカ ルガゾール-919」を開発した。今後、コンクリート品質総合管理システム「Concrete Station」とともに、現場で展開していく。
清水建設は、コンクリート打継ぎ処理の効率化に向け、経験が浅い作業員でも簡単にムラなく全面に散布できる新たな打継ぎ処理剤「シーカ ルガゾール-919」を日本シーカと共同開発した。日本シーカは、2020年9月中旬から、1缶18キロあたり2万3000円(税別)で外販している。
従来品と比べ材料費と工事費込みで約30%コスト削減
コンクリートを打設すると、表層に余剰水とともに不純物が浮上し、レイタンスと呼ばれる1〜2ミリ程度の薄い脆弱層が形成される。レイタンスの除去作業を打継ぎ処理と呼び、コンクリートの品質管理には欠かせない。通常、コンクリートの打設後にレイタンスの硬化を防止する処理剤を散布して、翌日、高圧水などを用いてレイタンスを除去する。
一方、処理剤の散布作業にはさまざまな課題があった。例えば、打設直後は、余剰水が処理剤の有効成分を希釈・流出させるため、余剰水の収束を2〜3時間待った後、処理剤をかけるが、1平方メートルあたりの散布量が300ccになると、勾配部の場合流れ落ちる。
また、処理剤が薄い褐色のため、散布状況を確認するのが難しかった。処理剤の放射が不十分になると、高圧水では除去できず、別途レイタンスを削り取る無駄な業務が発生するため、熟練工が細心の注意を払って散布作業を行っているのが実情だ。
従来の課題を解消するため、清水建設は日本シーカとともに、シーカ ルガゾール-919を開発した。シーカ ルガゾール-919は、含有しているアルカリ増粘剤の作用により、コンクリートに触れると処理剤自体が粘性を増し、特定の噴霧器を使用すると泡立つ。
従来品と比較して、粘性があるため、コンクリートの打設直後に散布しても成分が希釈・流出せず、しっかりコンクリートの表面を覆い浸透するとともに、傾斜部にも問題なくかけられる。
さらに、泡により散布済み部位を確かめられるので、経験が浅い作業員でも噴霧器を使ってムラなく任意の箇所に固着させられる。加えて、散布までの待ち時間が減るため、待機時間を2時間と想定すれば、これまでの処理剤に比べ、材料費を含めた工事費で約30%のコストカットが見込める。
今後、清水建設は、コンクリート品質総合管理システム「Concrete Station」と合わせてシーカ ルガゾール-919を現場で広く展開していく。なお、開発にあたっては、清水建設が処理剤の仕様設定や性能確認を担い、日本シーカが製造を担当した。
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