トヨタの生産方式をMITが体系化した「リーン生産方式」の建設業での活用法:メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020(2/2 ページ)
立命館大学 理工学部 教授の建山和由氏は、i-Constructionの目に見える効果として、近年活用が増加している現場の映像を活用したシステムと、トヨタの生産方式をMITが体系化した「リーン生産方式」の導入を提唱している。
全業務を3つの作業に区分するリーン生産方式
昨今、i-Constructionとともに、現場の作業効率化に役立っているのが、現場映像を活用したシステムやリーン生産方式だ。現場の映像を活用したシステムとしては、タイムラプスを使用したものやジンバルカメラと骨伝導マイクを組み合わせたものがある。
タイムラプスを用いたシステムは、ストリーミング方式で再生した現場の映像から特定時間帯の場面だけを切り出し、再生時間やデータ量をスリム化し、現場の状況を把握できるようにする。
ジンバルカメラと骨伝導マイクを組み合わせたシステムは、現場の作業者が装着したジンバルカメラで施工状況を撮影して、映像を遠隔地の管理者がPCなどで確認するリモートのコミュニケーション手段。現場のスタッフが身に着けた骨伝導マイクを介して、管理者はチェックしたい箇所や作業指示などを伝え、現場からの音声は骨伝導マイクを使用しているため騒音の影響を受けない。
リーン生産方式は、トヨタの生産方式を米マサチューセッツ工科大学が研究し体系化したもの。無駄を可視化して改善することで、工程の全体にわたって、コストとリードタイムを減らす。
リーン生産方式で業務を効率化する際には、まず全作業を分析し、仕事の中心となる正味作業、重要性は低いがなくてはならない付帯作業、無駄な作業の3種類に分ける。正味作業は現状維持とし、無駄な作業は省き、付帯作業は効率化を図る。
一例として、道路土工に当てはめると、正味作業は施工、付帯作業は書類作成や現場写真の撮影、測量、無駄な作業は工程間の調整時間や検査待ち時間に相当する。
付帯作業の工事写真の管理を合理化する方法は、電子小黒板アプリの使用が該当する。これまで、工事写真を撮る時は、現場の情報を記載した黒板とともに施工したエリアを撮っていた。そのため、黒板の持ち歩きや撮影対象ごとに黒板の内容を書き直さなければならなかった。黒板に記入した文字や数字も不鮮明で見にくく、写真整理にも時間がかかっていた。
こうした問題点を解消したのが電子小黒板アプリ。電子小黒板アプリは、黒板を現場で携帯することなく、対象物の情報を記入した電子小黒板に、スマートフォンで撮影した画像をひも付けたデータをクラウド経由で事務所のPCに送るだけ。
また、出来形を計測した値を電子小黒板アプリに入力し、クラウドに送信すれば、事務所のPCでは受信したデータを出力するだけで、出来形に関する書類作成が完了する。
総力特集:
メンテナンスと国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)に焦点を絞った建設総合展「メンテナンス・レジリエンスOSAKA 2020」が2020年7月29日、インテックス大阪で開幕する。
コロナ禍の中で、ひさびさとなる建設展の開催となった本展では、インフラ検査・維持管理をはじめ、建設資材、防災・減災、i-Construction、労働安全衛生など、最先端の資機材やサービスが一堂に会する。特集ページでは、会場でのブース取材やセミナーレポートで、インフラの最新テクノロジーや市場動向を紹介する。
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