エプソンが建設ドッドウェブと協業、システム連携で“中小建設業”の月次決算をサポート:製品動向
エプソンは、建設ドットウェブと協業し、従業員数20人以下の小規模建設業者を対象にした経営支援のため、両社のシステムを連携させる。新たに提供するサービスでは、建設業のノウハウも盛り込んだ会計事務所の経営助言も行っていく。
エプソンは2020年7月21日、小規模建設業者の経営力強化を目指し、建設ドットウェブのシステムと提携を結び、新しいサービスを同年8月7日に提供開始すると発表した。同時に、建設ドットウェブが設立した建設業の経営助言ノウハウを研究している原価管理研究会(SCC)とも連携し、会計事務所を通じた経営助言による支援も行う。
新しい両社のサービスでは、エプソンのCAD用大判プリンタやサブスクリプション型複合機といったハードウェアとセットで提案することで、CAD制作の現場も含めたトータルでの経営基盤の構築をバックアップしていく。
小規模建設業者のIT導入率は8%台
提携に至った市場の背景についてエプソンは、中小の建設業者では慢性的な人手不足により、人件費・資材原価など、収益管理の重要性が高まっていると指摘する。しかし、多くの建設業者は、IT活用にまで至っておらず、計画的な収支管理がなされないまま経営をしているのが実態だ。ルーズな予算管理から脱却するには、会社の財務状況などを把握している会計事務所の協力が不可欠となっている。
中小企業庁が2017年3月に公表した「中小企業・小規模事業者のIT利用の状況及び課題について」では、建設業者のITシステム導入率の中で、会計などの基幹業務統合ソフトの導入率は16.7%。とくに、従業員20人以下の小規模建設業者を対象にした建設ドットウェブの調査では、ソフト導入率は約8.4%にとどまっている。
両社協業の構想では、エプソンの会計事務所向け財務アプリケーション「財務顧問 R4」及び企業向け「Weplat 財務応援 R4」と、建設ドットウェブが開発した経営管理システム「原価指南」を連動させることで、伝票入力だけで経営管理に必要な「限界利益」を管理し、簡単に月次決算ができるようになるという。
R4シリーズは、クラウドとハードウェアプラットフォームを活用して、バックオフィス業務(会計・税務・人事・総務)の処理に必要なインプット情報(取引情報・証憑類)から、アウトプット情報(申告・申請手続き)までを自動化する業務アプリケーションソフト。電子申告に対応している中小規模の法人用Weplat 財務応援 R4は、電子化された金融機関の取引き情報を自動で仕訳する機能やクラウドデータ共有に対応したラインアップをそろえ、低価格のライト版で年間2万円(税別)の月額料金。
一方の原価指南は、小規模企業をターゲットとした経営に関するオールインワンの管理システム。原価管理だけでなく、月次決算を行うための会計や日報管理、限界利益管理などの各種機能を搭載し、使用料は月額1万2000円(税別)。
会計事務所は、各ソフトに企業が登録したデータを基に、建設業者への経営助言を行うが、その際、一般企業へのアドバイスとは異なり、建設業に特化したノウハウが必要となる。そこで、ノウハウを持ち合わせたSCCとも協力関係を構築することで、会計事務所による経営助言もサポートする。
また、「財務顧問 R4/財務応援 R4」やCAD用大判プリンタ、複合機などを取り扱うセールスパートナーとも連携することで、地域密着型の支援体制を整え、アプリケーションとハードウェアの両面で最適な組み合わせを提案していく。
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