【BAS徹底解剖】BAS/BEMSの広がり〜人々の安心・安全、利便性への貢献〜:アズビルが解き明かす「BAS」解体新書!(3)(3/3 ページ)
建物には、空調、照明、監視カメラなど、さまざまな設備機器が導入されている。それらを効果的に運用するシステムとして、ビルディングオートメーションシステム(Building Automation System、BAS)が存在する。本連載では、制御・計測機器メーカーで各種ビル設備サービスを展開するアズビルが、「建物の頭脳」ともいえるBASやシステムを活用したエネルギー管理システム「BEMS」を紹介し、今後の可能性についても解説する。第3回目は、BASが建物利用者に提供する安心・安全、利便性について紹介していく。
(2)生体認証技術の進歩
生体認証(バイオメトリクス認証)は、人間の身体的特徴を活用した個人認証技術で、紛失、盗難、持ち忘れなどのリスクが無く、偽造や複製が難しい点で大きなメリットがあります。
・指紋認証
接触型の画像センサーにより指紋を読み取り、登録されている情報と比較します。生体認証の中では最も古く、多くの認証端末が流通しており低コストで導入できますが、人または職業によって指紋が摩耗しているなどの理由で、認証以前に読み取りができない場合があります。
・静脈認証
近赤外線の透過により静脈パターンを読み取り、登録されている情報と比較します。読み取るのは、指、手のひら、手の甲の3種類があります。指紋認証に比べ個人差が小さく、日本国内では銀行のATMに採用されたことから認知度が上がり、入退室での利用も増えています。
・虹彩認証
虹彩は、いわゆる黒目の内側、瞳孔の周りのドーナツ状の部分であり、個人ごとに異なる模様を持ち、生涯変わることがないとされています。目の画像を撮影し、登録されている虹彩パターン(模様)と比較します。ハンズフリー入退室が可能になり、目さえ露出していれば認証するため、食品工場、薬品工場、実験施設などで需要が高く、端末のコスト次第で大きく普及することが見込まれます。
これらの生体認証技術は、カードやタグなどの認証用デバイスを持たなくて良い反面、カードにはない「認証エラー」がある程度の確率で発生します。また、先天的、あるいは事故などによる欠損も考えられるため、ICカードなど別の手段によるバックアップを検討する必要があります。さらには、生体認証の運用上の難しさとして、本人が立ち会い、専用の装置で生体情報を登録しなければならないという手間が掛かる点も、とくに大規模施設では忘れてはいけません。
■顔認証技術の台頭
ここ数年で長足の進歩を遂げたAIを応用した顔認証技術が、大きな話題となっています。顔認証も生体認証の一つであり、認証エラーの可能性などは他の方式と共通ですが、入退室管理としてみた場合は、いくつか他と決定的に異なることがあります(注記:下記に挙げる特徴は、製品により該当しないものもあります)。
(1)距離を置いて認証
顔の映像さえ得られれば、数メートル離れた場所からでも認証することができます。ドアの少し手前で認証して解錠することにより、ウォークスルー(立ち止まらない)の入退室が可能となります。
(2)写真データで登録
本人の立ち合いを必要とせず、デジタルカメラやスマートフォンなどで撮影した顔写真データを収集し、システムに登録することで認証が可能となります。企業など利用者の顔写真を既に管理している組織であれば、あらためて撮影する必要もありません。
(3)一般的なカメラでも認証
専用の端末ではなく、防犯のために設置した監視カメラを代用して認証する技術もあります。この技術では、映像に含まれる複数の顔を同時に認証することにも対応しています(入退室ではなく労働時間の管理などで有効)。
顔を見せるだけで通行が許可されるという経験は、これまでの入退室管理システムにはない高い利便性を利用者に提供します。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策として、離れた場所から非接触で認証できることも、現在大きな注目を集めている理由となっています(顔認証と同時に、体表面温度を測定し、罹患の疑いのある人を見つけ出す製品も登場しています)。
ただ、自分の顔写真がシステムに保管されることに、強い拒否感を持つ利用者がいることも確かです。顔認証による入退室管理システムを導入する場合は、顔認証を望まない利用者のため、非接触ICカードなどとの併設を検討する必要があります。
■BASが提供する利便性
顔認証などの新技術により、建物の入退室管理システムは居住者に対して防犯性とともに新たな利便性を提供していきます。同時に、例えば来訪者、宅配業者、設備メンテナンス業者などの入館受付や各種作業の開始/終了時に認証を行い、その履歴を蓄積することで、建物を管理する際の効率化ももたらします。監視カメラ設備をBASに統合し、防犯だけではなく設備監視に利用する取り組みもあります。
次回は、BAS/BEMSの「環境への貢献」について紹介する予定です。
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