建機の自動化開発をAIで支援、シミュレーター「Vortex Studio」を提供:産業動向
電通国際情報サービスとアラヤは、AIの要素技術である「深層強化学習」や「模倣学習」を用い、建機メーカー向けに建機自動化システムを開発する支援サービスで業務提携を結び、提供を開始した。
電通国際情報サービスとアラヤは、深層強化学習や模倣学習を活用した建設機械の自動化開発を支援するサービスを2020年2月に始めた。
3Dシミュレーター「Vortex Studio」を開発環境のベースに
サービスの内容は、自動化開発に取り組む建機メーカーを対象に、カナダに本社を置くCM Labs Simulationsの高速シミュレーター「Vortex Studio」のライセンスを提供し、導入支援に加え、熟練オペレーターの動きを自ら学習するAIアルゴリズムの開発から実装までを一連のサービスとして提供する。サービスを受けることで、複雑で操作難易度の高い、AIによる自動操縦シミュレーションが実現し、操縦自動化に向けた実験と分析業務の効率化が図れるという。
Vortex Studioは、衝突検出、剛性接触、安定した力を正確に計算して、高精度の動力学モデリングが可能なエンジンを搭載。バケットやブレードなどの土木建設ツールや変形可能な地形を含む仮想環境のシミュレーションが可能で、計算効率の高いアルゴリズムにより、機構運動/ケーブル変形/土の掘削といった3次元シミュレーションを高速で処理し、デスクトップ上での設計を素早く繰り返せる。建機の3Dグラフィックスは、VR化して360度で確認したり、操縦トレーニングに利用したりもできる。主に建機、海運、防衛の分野で30年以上の利用実績があり、ワールドワイドで100社以上の企業に採用されている。
新規サービスでは、機械操作の高速シミュレーターであるVortex Studioを実行環境としている。ライセンス提供、導入支援、AIアルゴリズムの開発・実装を一連のサービスとして提供。Vortex Studioを強化学習アルゴリズムの開発キット「OpenAI Gym」のインタフェースにすることで、深層強化学習や模倣学習のプロセスを実行することが可能になるという。
業務提携の理由について、建機の自動化では、特殊かつ多様な用途や環境で稼働する建機は、一般的な車両に比べ挙動が複雑で操作難易度が高く、操作実験や分析に多大な労力と時間がかかることが、自動化開発の妨げとなっていることを挙げる。
これまでに両社は、さまざまな産業分野でのAIの応用研究を共同で進んできたが、今回、電通国際情報サービスの主要事業領域の一つ、機械設計分野に枠組みを広げ、両社の知見を生かしたサービス開発に至った。サービス提供にあたり電通国際情報サービスは、Vortex Studioの国内代理店として建機メーカーへの導入を数多く支援してきた知見を生かし、顧客ごとの課題分析や実行環境設計をはじめ、シミュレーターモデルの作成、分析・フィードバックといったプロジェクト全体の推進を担う。一方、アラヤは、深層強化学習・模倣学習を用いたAI環境の構築を行う。
Pick Up記事:
★「CIM導入には社内の“パラダイムシフト”が必須」、独自の資格制度など八千代エンジが説く
総合建設コンサルタント・八千代エンジニヤリングは、2015年から全社を挙げて、BIM/CIM推進に取り組んできた。
同社CIM推進室 室長 藤澤泰雄氏は、これまでの歩みを振り返るとともに、CIMの導入に舵を切った5つの理由を示し、目標とすべき技術者像について説く。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 建機自動化の現在地とその先に――【後編】:ゲーム機の様に建機作業ソフトを入れ替える拡張性
キャタピラーと大成建設は、割岩や土砂の掘削・積み込みを自動化する技術開発を進めている。自動化の重要なコア技術と大成建設が位置付けるのが、機体の機構と制御プログラム。あらゆる建機作業を電子化して、家庭用ゲーム機の様にソフトを入れ替えれば、幅広い作業に対応できるという。 - 大林組がKDDIやNECと共同で、複数建機の「5G遠隔施工」に成功
大林組、KDDI、NECは、5Gを活用した種類の異なる建機の遠隔操作や自動化を道路造成工事で試行し、掘削から、運搬、敷きならし、転圧までの一連の施工を成功させた。 - 5Gを使って建設機械の自動運転と精細映像伝送を実現、大成建設とソフトバンク
大成建設とソフトバンクが、5Gを使った建設機械の自動運転と精細映像伝送を実証。遠隔操作と自動制御ができる建設機械システムと可搬型5G設備との連携で実現した。 - 鹿島が“建機の自動化”をダム工事で本格導入、5時間の盛立作業に成功
鹿島建設が開発を進める建設機械を自律自動化するICT技術「A4CSEL」がダム建設工事に本格導入され、計7台の建機が5時間にわたって無人で連続作業を行うことに成功した。次の段階では、30台ほどの建機を投入し、建設現場の「工場化」を目指す。