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【新連載】日本のBIM先駆者が警鐘を鳴らす「なぜ日本のBIMはダメなのか?」BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(1)(3/3 ページ)

日本の建設業界は、低い生産性、労働者の老齢化、多くの労働災害など、市場が破綻しかねないほどに深刻な問題が目前に迫り、一刻も早く手を打たなければならない局面に差し掛かっている。特効薬となるのが、BIMとそれを核に据えたICT活用だと、今では多くの業界人が知るところだが、建設の全工程で実践活用できている企業はほぼ皆無と言えよう。2020年度に全物件で“設計BIM化”の大望を抱く大和ハウス工業で、日本のBIM開拓の一翼を担ってきた同社技術本部 BIM推進部 次長・伊藤久晴氏が、BIMを真に有効活用するための道標を示す。

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設計の道具をBIMに置き換えるだけではダメ

 日本のBIMのダメなところの2つ目は、自らの業務を大幅に変えるということをしないで、設計の道具をBIMソフトに変えるだけで、結果がついてくると思っていることだ。そもそも、BIMを推進するリーダーたちがBIMソフトで業務を実践したことがないから、他人ごとなのだろう。BIMソフトの特徴を知ってさえいれば、「BIMへの移行は、業務プロセスの改善である」ことが理解できるはずだ。

 元来、日本人は勤勉で優秀という過信から、これまでの技術や仕事のやり方に何も疑問を感じていない人は多い。それでよければ、そもそもBIMなどという無駄な投資をせず、むしろBIMをやらない会社として確固たる立ち位置を表明した方が、よほど潔い。

 さらに、もう一つダメなところを付け加えると、BIMの移行が進んでいないにも関らず、海外で流行っている最新技術だけには、敏感に飛びつく傾向が多々見られることである。本来ならば、BIMという新しい技術への移行と業務プロセスの改革があってこそ、新たな技術を採用する意味と価値が生じるという肝心なことが認識されていない。

 日本のBIMがダメな理由は、実のところ、もともとは当社のBIMのダメだったところにも置き換えられる。これは、他社にも当てはまる部分があると思うので、あえて自戒を込めて連載の最初に書かせていただいた。もちろん、正しくBIMを進めている企業もあるのは理解しているが、何らかの参考になればと思い筆をとった。

 本連載では、大和ハウス工業が、どうやって克服し、その先にどのような可能性を構想しているか、詳(つまび)らかにしていきたい。


これまでのBIMの歩み

著者Profile

伊藤 久晴/Hisaharu Ito

大和ハウス工業 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年4月1日現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。

近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。

連載バックナンバー:

BIMで建設業界に革命を!〜10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ

 第1回:日本のBIM先駆者が警鐘を鳴らす「なぜ日本のBIMはダメなのか?」

 第2回:日本のBIM先駆者が示す「BIMが目指すゴールへの道標」

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