【第2回】日本のBIM先駆者が示す「BIMが目指すゴールへの道標」:BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(2)(1/3 ページ)
本連載は、2020年度に全物件で“設計BIM化”の大望を抱く大和ハウス工業で、日本のBIM開拓の一翼を担ってきた同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が、BIMを真に有効活用するための道標を示す。第2回は、BIMの成熟指標と、DXの成長指標を組み合わせたロードマップ「拡張BIMレベル(Extended BIM Level)」について解説していく。
BIMが目指すゴールとは?〜建設業界革命としてDXを目指そう!〜
いま一度原点に立ち返ると、最初BIMは、設計・施工の「生産性向上」の手法として、脚光を浴びていたはずである。それが、今は、BIMを使うと「時間がかかる」「工期が伸びる」「設計報酬を上げねばならない」という声が散見される。
そう言われる方になぜBIMをやるのかと聞くと、「整合性や納まりの確認で、結果的に建物の品質が上がる」「設計の負担が増えても次工程が楽になる」と次工程での効果の期待を説明される場合が多い。だが、その程度のBIMに対する心構えでは、「品質の向上」や「次工程の負担軽減」といった効果はあまり表れない。実は、次工程でBIMの効果を上げるのは、自工程で効果を上げるよりも難易度は高い。なぜなら、次工程は、より詳細な情報を要求するため、そこに連携すべきBIMモデルの精度はかなり高くならざるを得ないからである。
「業務で成果を上げるBIMに移行する」には、正しくBIMを成長させてゆかねばならない。段階的にBIMを成長させてゆくことができれば、業務の生産性を上げることができるだけでなく、さらに新しい世界が見えてくる。「新しい世界」とは何か?私はこれを「建設業界のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」と考えている。BIMがDXにつながるという構想は、突拍子もないように思えるが、BIMを「革命」であると思考するには、ゴールとして、新しいビジネスモデルの創出といった業界に新しい価値を生むモノがなければならない。
実現する方法として、私は、3つのBIMの成熟指標と、3つのDXの成長指標を組み合わせた、“拡張BIMレベル(Extended BIM Level)”というものを作った。
本連載では、このEBL(拡張BIMレベル)を用いて、正しくBIMを成長させ、「生産性向上」などの成果を確実に上げてゆく道筋について、解き明かしていく。
日本の政策から見たBIMの将来像〜経済成長戦略としてのBIMへの取り組み〜
連載第2回では、BIMのゴールがDXであると考え着いた理由から解説する。発想のきっかけは、第5期科学技術基本計画の「Society 5.0」にある。内閣府によると、「Society 5.0」とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義している。
Society 5.0について外せないトピックスとして、自由民主党 財務調査会 経済成長戦略本部は2019年5月14日、『「令和」時代・経済成長戦略』を策定し、安倍晋三首相に提言した。
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