【限定全公開】「作る」から「使う」“CIM”人材の育成はどうすべきか?:Autodesk University Japan 2019(2/5 ページ)
国内外の鉄道・道路・橋梁などの計画や設計、3次元モデル化、インフラマネジメント、まちづくりコーディネートなどを行う中央復建コンサルタンツは、CIMにいち早く取り組み、設計提案に活用してきた。社内では3次元モデルを単に「作る」だけではなく、実践的に「使う」を標ぼうし、CADオペレータや管理者、さらには一般職を対象にした独自の研修を定期開催し、各ポジションでCIMを扱える人材を自社で賄うため育成に努めている。
苦境を乗り越え、CIM本格導入へ
2009年度からは本格導入を目前に控え、「備える」「広める」「高める」と位置付け、ハード/ソフトを社内に“準備”し、CADなどのライセンスも30ほど取得。“広める”という意味では、3次元CADの社内研修をスタートさせ、“高める”では勉強だけでなく、実際の業務でCIMを全社一丸となって取り組み始めた。
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CIMモデルを「作る」だけから、真に「使う」へ
2012年度に入ると、ようやくここで国土交通省にも動きが出てきた。当時、同省の事務次官だった佐藤直義氏がCIMという概念を定義。これまでは、「弊社が勝手にこういうことをしますとやっていたが、正直まだ求められているレベルに達していなかった。CIMの有効性や意義を発注先に認めてもらえず、つらい時代もあった。何よりも社内での理解が得られていなかった」(森室長)。
その後、国交省はBIM/CIMの推進へと一気に舵を切る。とくに2017年に公表された「CIM導入ガイドライン」は、一大転換点となった。
中央復建コンサルタンツでは、従来はモデルを「作る」ことに主眼をおいた受動的な取り組みがほとんどだったが、翌2018年度にはCIM担当者やインストラクターを指名。ガイドラインが出てからは、とくに3次元モデルを「使う」ということを念頭に、そのために必須となる人材育成を意識するようになった。
「リクワイヤメントという言葉があるが、作るということではなく、使うという意識転換で、何のためにこれを作るのか、目的を明確にしたうえでモデルを使わなければ意味がないと再認識した。弊社はコンサルだが、のちの施工や維持管理などでの使われ方を考慮して、提案型のCIMをやっていこうという姿勢に変わった。そのためには社内にCIM教育が欠かせないと思い至った」(森氏)。
CIMが社内にスムーズに広がっていったわけではなかった
森氏は、順風満帆ではなかったCIM課題のその1として、モチベーションが高まらないことを挙げる。「発注者から求められてもいないものをなぜやるのか。コンサルに限らずこの業界は忙しいという認識があるが、10年ほど前はいまのような働き方改革の時代では考えられないくらい、忙しく残業問題もあり、CIMにそもそも手間をかける余裕がなかった」。
現状では、国の進めるCIM活用型に沿ってCIM案件は、発注者指定型となっているが、当時は技術提案という形だった。従来の2次元に加えて、プラスアルファとして3次元もモデリングしていた。この部分は、サービス(無料)のため、原価に全く合わない。しかし、詳細度(LOD)を上げて、3次元モデルを細かく作ろうとすれば、オペレーターは時間があればあるだけ掛けてしまい、時間とコストが膨らむ。
「モデルを作る作業というのは楽しい。若い方はCADを使いこなして、どんどん精緻に作ろうとする。これは本人のやる気にもつながるし、CADの操作技術の向上にもなるので良い面もあるが、残業が増えるという側面ではやはり問題だ」(森氏)。
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