【限定全公開】「作る」から「使う」“CIM”人材の育成はどうすべきか?:Autodesk University Japan 2019(3/5 ページ)
国内外の鉄道・道路・橋梁などの計画や設計、3次元モデル化、インフラマネジメント、まちづくりコーディネートなどを行う中央復建コンサルタンツは、CIMにいち早く取り組み、設計提案に活用してきた。社内では3次元モデルを単に「作る」だけではなく、実践的に「使う」を標ぼうし、CADオペレータや管理者、さらには一般職を対象にした独自の研修を定期開催し、各ポジションでCIMを扱える人材を自社で賄うため育成に努めている。
CIM人材育成の効果的な方法とは?
また、発注者との関係では、積算基準の根拠となっている数量算出ツールが3次元に移行しつつある一方で、提出物はまだ2次元の成果物が求められている。せっかく3Dモデルを作っても、2次元の図面を再度作らねばならならず、2度手間になっている。
慣れ親しんだやり方を変えるというのは一時的にみれば非効率。土木の世界は経験工学ということもあり、仕事のやり方は既に確立されている。図面を作る人、数量を出す人、打ち合わせをする人と、分業化されていて、設計者とCADオペも分離。そうした場合、設計者はCADオペの背後に立ち、指示をすることが多い。CADオペに口で指示を出し、単なる手配師になってしまっているケースが少なくない。
「CIMはこういった慣れ親しんだ土木の手法そのものを変えることになるだろう。CIMや3次元は見栄えの良いパース図を作るだけという誤解は、いまでも一般的にある。CIMは、推進室の仕事でしょうと。CIMは、あくまでCADオペの仕事だと切り分けるような言い方をする人もいて、なかなか普及が進まなかった」(森氏)。
2009年度から社内改革の一環で開始した3次元CAD研修は当初、社員の中から参加希望者を募っていたが、2010年度には総合職/一般職関係なく、新入社員全員の参加を義務化。これまでに受講者数は289人で、全従業員500人ほどの会社なので半分以上の社員は、研修を1回は受けていることになる。
CIMモデルを“作る”という点では、ベースとなるテキストがそもそも無かったため、CADソフトウェアAUTOCADのテキストを社内の有志によって自前で作った。2010年度には、新入社員全員を対象に、3次元CAD研修の参加を義務付けた。
研修で使うテキストは、基礎となる2次元の次に、Civil 3Dのコリドーモデリング機能をはじめ、Navisworksなどを学ための教本を自前で作成した。画面のキャプチャーを貼って、操作の一連の流れを視覚的に理解できるように工夫を凝らしている。
他にも、社内で度々開催している○○塾の一環で「CIM塾」も開催。CIM塾は、各部門の技術者が大阪のCIM推進室に1〜2週間、指導を受けながら業務をこなし、トレーニングする。実践的な業務でCIMを遂行することで確実に身に着き、習得した知見を各部門に持ち帰っているため、CIMが現場にも広がってきている。
いまの塾生12人のうち、7〜8人は一般職。森氏は、「わざわざ一般職にも、出張してもらって、最先端の技術に触れる機会を作ることは、モチベーションの向上につながる。人材育成で大事なことは、いかにモチベーションを高めるかということに懸かっている」と話す。
また、テクニカル・ミーティングも設け、CIMのインストラクターを何人か指名して、CADオペ自体の指導係となるようなインストラクターを各部門に配置し、毎月1回の頻度で会合を開いている。この場では、各インストラクターから意見を出し合ってもらい、テクニックのコツや問題点など共有する。
継続学習の観点では、マネジメント・ミーティングとして、既に技術を保有している管理者を対象に2カ月に1度集まって、基準類の最新動向、現時点での問題点、あるいはリクワイヤメントに対する具体的な対応などを話し合っている。これにより、何か疑問があればCIM推進室へではなく、推進室に頼らずに各部門が自立して、問題を解決できる体制が構築されつつある。
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