土砂災害の対策に効く傾斜監視システム、遠隔点検で省人化を実現:Sigfoxが変える建設現場の維持管理(2)(2/2 ページ)
本連載では、京セラコミュニケーションシステム LPWAソリューション事業部 LPWAソリューション部 LPWAソリューション1課の海野晃平氏が、Sigfoxの概要や現場での活用事例などを説明。第2回となる今回はSigfoxネットワークを利用したIoTデバイス・ソリューションについて解説する。
構造物の変形を数値化するひずみ監視システム
3つ目はひずみ監視システムである。これは橋梁やトンネルなどの構造物にIoTデバイスを設置することで、構造物のひび割れなどの変形を数値化するソリューション。
日本では、建設後50年を経過する社会インフラが増加していることに伴い、事故防止に向けた状態把握やその改修が課題となっている。
そうした中、ひずみ監視システムを利用することで、構造物の状態を遠隔で把握できることに加え、ひび割れなど目に見える損傷が生じる前に構造物の変形を検知し、補修を行うことで、事故の未然防止や維持管理コストの削減に貢献する。
ひずみ監視システムは、経年劣化した構造物の監視だけではなく、建設現場をはじめとするさまざまな現場で利用されている。具体的には、仮設構造物である止水壁や土留めに使用することで、倒壊や転倒による事故のリスクを低減させることができる。
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河川の氾濫による被害を低減する水位監視システム
4つ目は、水位監視システム。これは河川や用水路にIoTデバイスを設置することで、定期的に水位を確認できるソリューションである。
近年、豪雨や相次ぐ台風による水害が多発している。そうした中、大規模河川においては、水位計やカメラを使った河川の状況を監視する仕組みの導入が進められている。一方で、市町村が管理するような中小河川では、コスト面が課題となり、いまだ未整備の河川が多い。
特に中小河川においては、急激に水位が上昇し氾濫(はんらん)するため、大きな被害となる可能性が高く、被害を防止・低減するため水位情報を住民に伝え、避難を喚起する仕組みが求められている。
この課題を解決するのが、Sigfoxネットワークを利用した水位監視システムである。電池のみで稼働するため電源供給による配線を不要とし、さらに従来の仕組みと比較するとデバイス、通信料が安価となるため、今後、中小河川においては、Sigfoxネットワークを利用した水位監視システムの導入が増えていくだろう。
第2回では、4つの事例を紹介してきた。これらの事例では、Sigfoxネットワークを利用することで、電池での長期間稼働を実現している。また従来のソリューションと比較し、デバイス本体、通信料、設置コストが安価となり、今後さらなる展開が期待されている。第3回では、建築物の付帯設備において、Sigfoxネットワークが活用されているデバイス・ソリューションを紹介する。
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