建設現場の火災に5分で避難、KDDIのクラウドを使ったIoT火災報知システム:現場の安全対策
竹中工務店、KDDI、ヤマトプロテックは、建設現場での火災発生時に、クラウドと連携した火災報知機によって自動で避難経路を選び、スピーカーで誘導するシステムを開発した。竹中工務店の実現場でシステムを用いた避難訓練を行い、5分で全員の避難が完了し、実用化に向けての有効性が認められた。
竹中工務店、KDDI、ヤマトプロテックは2019年11月5日、火災発生時に避難経路を選択して、メールや場内スピーカーで自動通知する「建設現場向けIoT火災報知システム」の実証実験を、竹中工務店東陽3丁目計画の作業所で行ったことを公表した。
3者の役割は、竹中工務店が実証実験フィールドとIoT分電盤、PLC通信に関する技術、KDDIはモジュール搭載IoTデバイスとクラウドシステム、ヤマトプロテックは火災報知器と制御モジュールをそれぞれ提供した。
クラウドと連携し、避難経路を自動でアナウンス
建設現場は日々の状況が変わるため、有線接続での火災報知器の集中管理は困難で、現状では局所的な使用にとどまっている。そのため、万一施工中に火災が発生した時は、初期対応や避難に時間がかかってしまうという危険性を潜んでいる。
3者が開発したシステムは、竹中工務店による独自のIoT分電盤と、KDDIのIoTクラウドシステム、ヤマトプロテックの火災報知制御モジュールなどを応用することで実現した。火災報知器をネットワークにつなぎ、クラウドシステムと連携させ、火災発生箇所に応じて避難ルートを選定し、場内スピーカーによってアナウンスする。
建設現場の全作業員に向け、一度に火災発生を通知することで、迅速な初動や避難誘導が可能になる。現場にいない作業員や内勤の事務職員にもメールで知らせるため、作業所が無人となる夜間にも有効な手段となる。
竹中工務店が開発したIoT分電盤は、PLC(電力線通信)を活用した仮設電源線のみでネットワークに接続し、設置するだけでWi-Fiスポットとなる。これにより、電波が届きにくい地上30階以上や地下でも通知を受けとれる。
2019年9月13日に実施した避難訓練では、発報に伴って、竹中工務店の作業所員と協力会社職長に、メールで避難指示や避難経路が通知されると同時に、所内のスピーカーからは避難経路が案内された。その結果、発報してから避難を開始するまでの時間は0分で、約5分でスピーディーな避難行動が実現したという。
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