ビル内で30mをワイヤレス通信する“ゲートウェイ”、センサーとBASを無線で接続しスマートビル実現へ:BAS
ジョンソンコントロールズは2019年1月31日、920MHz帯の無線ネットワークで、各種センサーとビルディング・オートメーション・システム(BAS:Building Automation System)をワイヤレス接続する「ゲートウェイ」を開発したことを公表した。
ジョンソンコントロールズは2019年1月31日、業界初の920MHz(メガヘルツ)帯無線ネットワークを採用し、温湿度などの環境情報を計測するワイヤレスセンサーと、ビルなどの中央監視システムの無線接続を実現する「ゲートウェイ」を開発したことを明らかにした。ゲートウェイの提供は、2019年2月から開始する予定。
複雑な配線工事が不要に、省施工・省スペースを実現
新しいゲートウェイは、セイコーインスツルと共同で開発。ビルネットワーク用のオープンな通信プロトコルであるBACnet (Building Automation and Control Network)MS/TPへの接続を実現した。
BACnet MS/TP接続が可能になったことで、ワイヤレスセンサーで収集した情報をBASへ取り込み、エネルギー効率を詳細に“見える化”することで、省エネで快適な空間作りがこれまで以上に実現する。
従来は、建物の温湿度などを計測するセンサーの多くが有線で接続されており、無線に対応したものはWi-Fiと同じ、2.4GHz帯の製品が多く使用されてきた。920MHz帯無線ネットワークは、電波の回り込みに優れ、電波到達性が高く、障害物があっても安定した通信が可能になる。つながりやすい通信環境を維持しながら、屋外ではWi-Fiの3倍、室内環境ではWi-Fiの2倍にあたる30m(メートル)の通信が可能になった。
今までは、各種センサーと、ビル管理システムを接続するために、シーケンサーや電気、ガス、水道などを監視するためのリモート盤などの設置が必要だった。この接続がワイヤレスとなったことで、複雑な配線工事が不要となり、省施工・省スペース化がもたらされる。
また、温湿度センサーやCO2センサー、照度、電力計量などのさまざまなワイヤレスセンサーをシームレスにつなげられるようになり、今までよりも詳細なデータを収集することで、ビッグデータを活用した快適環境の整備と省エネ施策の立案ができるようになる。さらに、ビル内のレイアウト変更や増改築にもフレキシブルに対応可能なため、低コストで高効率なスマートビルが実現する。
今回使用するワイヤレスセンサーは、長寿命の電池式で、メンテナンスの手間も軽減される。計装工事の負荷が減り、少施工になることで、建設業界の人手不足の解消にも役立つ。
ゲートウェイの価格はオープンで、システム構成や工事内容により異なる。
ジョンソンコントロールズは「今後、セイコーインスツルと共同開発したワイヤレスソリューションを活用し、その他の設備のワイヤレス化も目指す」としている。
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