乾電池のみで数年間も稼働するLPWAネットワーク「Sigfox」:Sigfoxが変える建設現場の維持管理(1)(1/2 ページ)
近年、建設業界では、事故の発生を防ぐことを目的に、構造物などの状況を可視化するIoT機器やシステムの導入が広がっている。例えば、橋梁(きょうりょう)などにセンサーを取り付け、損傷具合を遠隔地で確認可能なシステムなどが挙げられる。こういった状況の中、IoT機器を低コストで運用できるネットワーク「Sigfox」に関心が集まっている。本連載では、京セラコミュニケーションシステム LPWAソリューション事業部 LPWAソリューション部 LPWAソリューション1課の海野晃平氏が、Sigfoxの概要や現場での活用事例などを説明する。
国内の道路、橋梁、トンネル、河川、港湾などは高度経済成長期に集中的に整備が行われてきた。今後20年間で、建設後50年を経過する社会インフラは増加し、戦略的に維持管理・更新することが求められる。
一方で、建設業においては、人手不足、高齢化が進行し、次世代への技術承継が大きな課題となっている。建設現場では、構造物の破損や作業員の転落など、多くのリスクを孕んでおり、安全に作業ができる環境整備も進めていく必要がある。
LPWAネットワークが生まれた経緯
こうした背景の中、IoTの導入が進められ、3G、LTE、Wi-Fiといった無線通信規格を使い、構造物、建設現場の環境を遠隔で監視するIoTソリューションが登場した。これらの無線通信規格は、高速大容量通信が可能で、例えば、現場の画像をリアルタイムに送信することができる。
IoTといってもその利用途はさまざまである。大容量の画像データを必要とする場合もあれば、センサーや計器データなど、少量データの送信で要件を満たすケースもある。しかし、通信技術は高速大容量通信を目指して進歩してきたこともあり、低速少量通信に特化した通信規格が存在しなかった。そこで、登場したのが「LPWAネットワーク(Low Power Wide Area)」である。
これは、欧州から始まった新たな無線ネットワークの総称であり、低消費電力で広域をカバーするネットワークである。電源の確保ができないような場所で、長時間使用することが可能で、まさに建造物や建設現場の環境監視に適合する通信規格である。今回は、このLPWAネットワークの1つであるSigfoxについて述べていく。
Sigfoxは現在世界65カ国でサービスを展開
Sigfoxとは、LPWAネットワークの1つで、2009年に設立した仏Sigfox S.A.が提供するグローバルIoTネットワーク。2019年10月現在、世界65ヵ国でサービスが展開されており、各国におけるサービスは、Sigfox S.A.と契約したネットワークオペレーターがインフラの構築と運用を行っている。
日本では京セラコミュニケーションシステムが電気通信事業者として2017年2月からサービスを展開し、2019年3月時点で国内における利用可能エリアを人口カバー率95%まで拡大した。
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