2方向の気流で快適・清浄な手術室を創出する空調システム、清水建設が商用化:BAS
清水建設は、医療機関の手術室を対象に、下降流(ダウンフロー)と水平旋回流(スワールフロー)の2方向の気流を組み合わせることで、快適・清浄な環境を創出する新型空調システムを開発した。
清水建設は、手術室内の温熱環境と清浄度を向上させる新型手術室空調システム「クリーンコンポ デュアルエアー」を商品化した。建築系の技術商品を扱う100%子会社のテクネットを通じて医療機関向けに提供する。
提供価格は、クラス10000、室面積60平方メートル程度の標準的な手術室用で、約2000万円(工事費込)。医療施設の新築・大規模改修工事の受注につなげて、年間20セットの導入を目指す。
下降流(ダウンフロー)と水平旋回流(スワールフロー)の組み合わせ
手術室の空調方式は、天井中央部から術野に向けて空調を吹き出し、壁面下部に設けた吸込口から吸収する方式が主流となっている。しかし、医療関係者からは、術野では温度、術野の周囲では温度と清浄度を制御する方法が求められていた。とくに温度は、執刀医と周囲にいる医療スタッフでは、着衣や活動量が異なることから、1系統の空調制御では限界があった。
新型空調システムのクリーンコンポ デュアルエアーは、術野をカバーする下降流と周囲をカバーする水平旋回流の2系統から空調を制御することで、課題を一挙に解決。術野については従来同様、下降流で温度と清浄度を調整し、下降流の吹出口に設ける温度センサーで吹き出し温度を23度に保ち、執刀医が望む術野の温熱環境を維持して、快適性を向上させる。これまでは、術野外の壁面に設けた温度センサーの感知温度で吹き出し温度を制御していたため、執刀医が望む術野の温度とは差があったが、この問題が改善される。
周囲については、水平旋回流を下降流の周囲に発生させることで、温度・清浄度をコントロール。これまでの空調方式は、気流が生じないショートサーキット状態になり空気のよどみが生じていた。水平旋回流は、天井付近の隅角部壁面対角に設ける吹出口から空調空気を吹き出すことで発生させ、周囲のよどみを解消し、医療スタッフの着衣・活動量に適した26度前後に保つとともに、清浄度も上がる。
実証実験では、下降流の吹出風速は0.3〜0.45m/s(メートル毎秒)程度となり、術野全体をカバー。水平旋回流は約1m/s程度の吹出風速で、術野の下降流を乱すことなく、周囲を大きく旋回する。
商品化にあたり、4病院に新方式の手術室空調を提案し、計39の手術室で採用され、関係者から高い評価を受けたという。
クリーンコンポ デュアルエアーの機器構成は、標準的な手術室(クラス10000、室面積60平方メートル、床面約8×8メートル、天井高3メートル)を想定した場合、術野系統空調は床置型空調機(側面吸込口付)×1機と、ダウンフローの高性能フィルター付吹出口×1セット。周囲系統空調は、床置型空調機(側面吸込口付)×1機と、旋回気流用の高性能フィルター付吹出口×2セット。天井循環系統は循環ファン×2機と、吸込口×2セット。
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