震災時に医療業務の継続性を高める「高機能免震病院」、戸田建設:耐震・制震・免震
戸田建設は、庁舎などで採用実績を伸ばす独自開発の免震工法「TO-HIS工法」と、複合工法「TO-RCS構法」を組み合わせた地域の中核病院を対象とする“免震システム”を発表した。震災時における病院内の揺れを最小限とし、医療業務の継続性を高めるとともに、復旧コストも大きく低減する。
戸田建設は2018年10月9日、震災時に医療業務の継続性を高める高機能免震病院「SSS HOSPITAL」を発表した。病棟プランとして、一般病院と精神科病院を想定した2種類の基本パッケージを用意している。
これは、同社が独自開発した免震構造を組み合わせることにより、地震発生時における室内の揺れを最小限に抑え、医療機器や什器備品の転倒被害を無くし、復旧にかかる費用や業務の中断期間を大きく低減させるもの。地域の中核病院などが、災害時にも医療機能の維持を実現することで、住民に対する安心感も提供できるとしている。「SSS HOSPITAL」の3Sは、SEISMIC ISOLATED(免震)・SECURE(安全)・STATE OF THE ART(最先端)を意味する。
具体的には、免震構造として経済性にも優れる独自技術の戸田式免震工法「TO-HIS工法」と同複合工法「TO-RCS構法」を採用。これにより、12m(メートル)間隔の柱スパンを実現し、一般的な耐震構造に比べ柱の本数を大幅に削減することで、建築計画の自由度も向上する。
「TO-HIS工法」は、自社開発の「弾性すべり支承」に加え、積層ゴムとオイルダンパーを組み合わせた免震システムである。大きな地震時には、「弾性すべり支承」のすべり材がステンレス製すべり板の上を滑らかにすべることで地震力を吸収。小さな揺れに対しては、積層ゴムの変形とオイルダンパーの減衰で免震する。高層建築に限らず中規模の軽量な建築物でも長周期化を可能とし、地震による揺れを大幅に低減する。
「TO-RCS構法」は、圧縮力に強いRC部材を柱に、軽量で曲げやせん断に優れるS部材を梁に用いる工法。容易にロングスパン化が図れ、生産性と経済性を向上する。
同社によると、免震構造の効果について、2011年3月に発生した東日本大震災では、耐震建築に比べ免震建築の揺れは1/4程度に抑えられた。2016年4月の熊本地震でも同地域の免震建築23棟のうち約2/3について調査が実施され、免震性能の大きな成果が実証されているという。
同社では「SSS HOSPITAL」により、一層の安全性と医療業務の継続をリーズナブルなコストで実現できるとし、今後についても「顧客のニーズに最適な性能が確保できるシステムを構築し、コストと高品質の両立が可能な建物を実現していきたい」としている。
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