医療関連業界初となる病院内の動線計画を支援するシステム、清水建設
清水建設は、病院内の多様で複雑な物流動線を“見える化”する医療関連業界初となる病院物流動線計画の支援システム「サプライくん」を開発し、実用化に成功した。今後、このシステムを活用して設計提案を行う他、コンサルティング業務として病院内の物流導線計画案を提案し、病院経営の合理化にも貢献していくという。
清水建設は2018年8月8日、病院内の多様で複雑な物流動線を“見える化”する病院物流動線計画支援システム「サプライくん」を開発し、実用化したことを明らかにした。今後、システムを使って設計提案を行う以外にも、病院の物流動線を評価・計画するコンサルティング業務を展開していく。コンサル費用は、病院の規模などの諸条件によって異なるが、200床規模の病院で100万円程度を見込む。
シミュレーション結果を平面図やグラフ、3Dアニメ化で可視化
サプライくんは、簡単な入力だけで、これまで複雑だった病院内の物流動線の合理性を見える化するシステム。諸室の配置をはじめとするパラメータを変更しながらシミュレーションを繰り返すことができるので、より合理的な動線計画を提案することが可能になる。
病院内では、医薬品や医療材料、リネン、食事などの多様な物品が、管理者や薬剤師・看護師などの多くのスタッフによって、バラバラな時間帯に、さまざまな手段で搬送されている。しかし、その複雑さにより、無駄が生じていることも多く、院内物流の合理化は病院経営上の重要な課題の一つとされていた。
しかし、院内物流を左右する動線の評価は、病院経営者にも設計者にとっても容易なものではなかった。加えて、物流を想定しながら進める病院の新築、増改築などの設計段階では、動線計画の評価は一層難しく、発注者、設計者をはじめとする関係者の合意形成にも時間を要していた。
清水建設が開発したサプライくんは、同社が保有する病院運営経験に基づくノウハウを生かし、医療材料、薬剤、リネンなどの物品カテゴリー別に、品目、関連諸室、搬送の時間帯や頻度などをデータベース化。標準的な院内物流方式をモデルとして初期設定している。
これにより、条件設定などの複雑な入力作業は不要で、システム適用時には、初めに病床数や各階平面図(PDFや手書き図面にも対応)などの基本情報を入力し、物流に関係する諸室や通路・エレベーターをシステムに認識させるアイコンを図面上に配置するだけで、一連の入力作業が終了する。基本情報の入力から結果表示までに要する時間は、わずか2〜3時間だという。
シミュレーション結果は、平面図上での物品別の最短の搬送経路表示、物品別の搬送距離のグラフ表示、搬送状況の3Dアニメーション表示の3通りの形式でアウトプットされる。搬送時間帯の想定や関係諸室などのパラメータ変更は、初期設定しているモデルの設定値を変更するだけで済む。
シミュレーション内容が、一目で分かるようにビジュアル表示されるため、病院経営者、職員、設計者などによる関係者の動線計画案に関する合意形成がこれまでよりも容易になるメリットもある。コンサルティング業務を行う上では、既存病院の基本情報を入力してシミュレーションすることで、運用面の課題抽出や改善計画の提案がスムーズに行える。さらに、オプションサービスとして、位置情報システム(ビーコン)を活用して、スタッフの移動データを収集し、混雑状況などを可視化できる3Dアニメーション化するとも用意されている。
清水建設は今後、サプライくんの3Dアニメーション上での自動解析やCAD、BIMとの連動も目指す。また、コンサルティング業務を積極展開することで、設計・施工案件の受注にもつなげていく考えを示している。
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