関東地整管内の橋梁の約32%は高度成長期に竣工、20年後には67%が老朽化に:第9回 出展技術発表会(2/2 ページ)
国土交通省 関東地方整備局は、展開する道路や橋梁といったインフラのメンテナンスサイクルや点検に関する取り組みの認知拡大を推し進めている。
吊り足場が必要な場合は、ラックレール式足場で対応
関東地方整備局管内の橋梁(きょうりょう)やトンネルといったインフラの現状について報告。2018年3月31日時点で、関東地方整備局が管理する道路橋は3289橋(溝橋含む)。全体の約32%にあたる約1040橋が高度経済成長期(1955〜1973年)に建設されており、20年後には、竣工後50年以上経過した橋の割合が67%まで膨れ上がる。
一方、道路トンネルは83カ所(山岳トンネル)で、20年後には、建設後50年以上経過した道路トンネルの割合が70%まで増加する。
こういった状況を踏まえ、関東地方整備局は、2009年に道路管理課 道路保全企画室を設置し、道路構造物の保全に関する業務を強化している。現在は、国道事務所にも道路構造保全官として担当者を配置。また、関東維持管理技術センターを設け、戦略的な維持管理・更新を実現するために、現場で必要とされる技術開発なども推進している。大規模な自然災害時には、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)としても活動し、被害の拡大防止に努めている。
橋梁などの構造物の点検は、規模や現場条件を考慮して仮設設備(足場や点検車など)を工夫し、効率化やコスト縮減を図っている。
「例えば、橋梁補修工事で設置した足場を点検にも利用することで、足場と規制帯の費用の縮減や現道交通規制日数を短縮している。また、吊(つ)り足場を取り付けることが必要となる橋梁では、移動足場(ラックレール式足場)を採用することで、コストを削減している」(阿部氏)。
点検物の診断は、本局、管理事務所、診断業者による判定会議で行う。点検・診断結果に基づき、損傷原因などを考察し、判定区分の妥当性を確認した上で、管理事務所所長の責任の明確化と主観的判断の排除が可能になるという。
これまで関東地方整備局の修繕計画は、損傷が悪化してからの事後保全対応だったが、損害が少ない程度での予防保全へ転換することで、長寿命化を図っている。個別施設計画に基づき、対策をとることで、ライフサイクルコストのカットや維持管理費用の平準化を推進。インフラの新たな損傷に迅速に対応するために、個別施設計画は、最新の点検結果などをベースに毎年度更新している。
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