土砂積み込みを自動化する大林組の自律運転システム、熟練技能者の操縦をAIで再現:建機自動化(2/2 ページ)
大林組、NEC、大裕は、土砂の積み込みを自動化する「バックホウ自律運転システム」を共同開発した。2019年12月に大林組の土木工事現場に適用する予定だ。
遠隔操縦装置はメーカーや機種を問わず搭載可能
積み込んだ土砂がダンプトラックの規定重量に達した場合は、作業を停止して次のダンプトラックが入って来るまで待機する。そのため、周辺には一切作業員が立ち入る必要がない。万一、作業員が立ち入ったとしても、建機に取り付けた複数のカメラとAIで作業員に接触する前にマシンを強制的に止める大林組の技術「クアトロアイズ」を活用して現場での接触事故を防ぐ。
バックホウの制御は、電気信号などで直接制御するのではなく、大林組と大裕が共同で開発した汎用遠隔操縦装置サロゲートを介して行う。サロゲートは、操作レバー部に装着するアタッチメントで、メーカーや機種を限定しない。バックホウ自律運転システムも、機種を選ばず、市販のバックホウに後付けで装着できる。
自動運転とオペレータによる遠隔操縦の切り替えも容易なため、自律運転中に発生した突発的な事象や自律運転では難しい複雑な作業が必要なケースなどでも、臨機応変に対応する。
バックホウには、作業エリアや建機の姿勢・位置を認識するさまざまなセンサーを、作業エリアやバックホウなどが認識しやすい場所に多数配置する。取得したセンサーデータは、通信ネットワーク経由で対象を制御する「ネットワークドコントロールシステム」で管理する。これにより、搭乗視点だけでなく、周囲の俯瞰視点でも同時に確認しながら、管理者が遠隔で作業状況を把握することができる。
今後、次世代通信技術「5G」を活用すれば、より高速・大容量・低遅延の通信が可能となり、1人の監視者が複数種類の建設機械を同時に自律化させることも見込める。
大林組ではこれから、少ない技能者でも高い生産性と安全性を実現できる次世代型の建設生産システムの構築を進め、将来的にはシステムの外販も視野に入れる。
また、大裕は、あらゆる建機の遠隔・自律操縦を目標にして、サロゲートの開発と普及、オペレータ育成事業を推進していく。
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