日立が昇降機エンジニア向けにVR教育、国内外との遠隔教育も:VR(2/2 ページ)
日立と日立ビルシステムは、エレベーターの保守・メンテナンスを行うエンジニアを対象に、独自のVR教育システムを開発した。これまで日立はビル設備の販売やアフターサービスで、アジア市場に進出し、海外にもエンジニア育成の拠点を開設してきたが、受け入れ人数の増加や教育メニューの拡充を図る目的でVR技術を活用するに至った。
施設の対応能力が飽和状態に、高度かつ効率的な教育の拡充も
国内の各センターでは、日立製のエレベーターとエスカレーターの実機を用いて、エスカレーターの作業実習、かご上乗降教育、ブレーキ分解整備などの作業訓練を日々行っている。同時に、現場で起こりうる危険を実際に体験させて、安全意識の向上を図るピット入退室体験や感電体験といった安全体感教育も実施している。
しかし、ここ数年はグローバルでの事業拡大によって、受け入れ人数の増加によって教育拠点の対応能力の飽和状態が発生。実機を使うのに多数の実習生が待つことも少なくないという。他にも、物理的に国内外から1つの施設に集まることによる非効率性や交通コスト増が課題とされていた。
また、安全体感教育には、昇降機の作業現場で少なくない落下事故といった実体験できない労働災害を体感できるこれまでにない新たな教育メニューも求められていた。
こうした課題を解決する目的で開発されたVR教育システムは、2019年4月から亀有総合センターを中心に運用をスタート。順次国内の各拠点でも展開していく。
VR教育システムは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に、コントローラー付きのHTC VIVE Proを採用。高性能PCとVRコンテンツを組み合わせて運用する。亀有総合センターには既に11台が導入され、各拠点に持ち出して出張体験会を既に行っている。
日立のVRシステムは、実際の映像をベースに製作され、臨場感のある映像で正しい作業手順の理解につながる。視点も1人称だけでなく、第三者視点で再確認することにより、危険ポイントの理解を深めることができる。作業教育のコンテンツは、体験後に点数表示され、手順が正しいかどうか、作業漏れがないか、理解度が可視化されるのも他のVR教育と異なる点だ。
日立製作所ビルシステムビジネスユニット人財開発センター長の宝珠山泰博氏は、「2019年度上期だけで当初計画を上回り300人以上が利用する予定で、年度中には合計700人が体験する。まずVRで体感してもらい、次に実機での教育を受けてもらうことを想定しており、社内の定期的な研修カリキュラムの一つとして運用していく」と話す。
次の展開としては、「エスカレーター作業やサービスカーの安全運転にも、VRコンテンツを拡充させる。現状では各国の通信状況やセキュリティの壁があるが、将来的には、VRコンテンツをサーバに置き、国内外の各拠点でダウンロードして、遠く離れていても利用できるような遠隔教育の仕組みを構築していく。その先には、顧客への提案に活用することやAR技術で現場の作業支援なども視野に入れている」とコメント。
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