建設現場用の建設搬送ロボ、台車に載せた1トンの資機材を自動でけん引:ロボット
東急建設は、THKと共同で、資機材搬送ロボットの開発を進めている。日々環境が変わる煩雑な建設現場での運用を想定し、段差や複雑な経路を自動で走り、特別な知識が無くても、カラーコーンの配置だけで簡単にルートを設定できる。
東急建設と、産業用ロボットの製造販売を行うTHKは共同で、建設現場の資機材搬送を自動化するロボットを2020年春の商用化を目指して開発を進めている。
ロボット導入で資機材の搬送作業を約30%効率化
建設業界では、就業者の減少に伴う人手不足を受け、生産性向上が喫緊の課題となっているが、実際の建設現場では、工事の進捗に合わせ、作業環境が日々変化することに加え、狭くゆとりのない通路や段差などが資機材搬送の生産性を阻害する要因と指摘されている。
こうした課題を解決する目的で、東急建設とTHKは、即座に経路変更が可能で、狭い通路や段差が多い現場でも、決められた位置に資機材を搬送できるロボットの共同開発に着手した。搬送ロボットの導入で、現在7人の作業員で行っている資機材搬送を5人に省人化させ、作業効率を約30%向上させられるという。
ロボットには、プログラミングの知識が無い現場作業者でも、搬送経路の設定が簡単にできるTHK独自の自律移動制御システム「SIGNAS」を搭載。ルートの設定は、サインポスト(目印を付けたカラーコーン)を設置するだけで完了し、サインポストを動かすだけで経路が修正される。ロボットは、装備しているステレオカメラで、経路周辺に設置したサインポストの距離と方位を計測し、目標経路を走るように自動で軌道を修正する。
ロボットは、高出力モータを2基備え、左右輪が独立した高出力モータで駆動するため、前進、後進、旋回の動作はスムーズに制御される。段差やスロープを乗り越えて走行し、現場で多く使用される平台車をけん引し、最大1トンまでの資材を運搬することが可能だ。また、進路上の障害物に対しては、LRF(レーザレンジファインダ)とバンパセンサーによって検知し、進行方向が妨げられた場合でも安全に停止する。
実証実験は、都内の大規模マンション工事の現場で、搬送ロボットが台車に載せた1トンの資機材をけん引した。鉄板の段差を乗り越えて、物の配置などの周辺環境が変化しても、安定して搬送作業を行ったという。
今後は、段階的に試験導入の範囲を広げ、2020年春の実用化を目指す。商用に際しては、建設現場への導入がしやすいようにレンタルでの提供が想定されている。
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