無人化施工で働き方改革へ、2025年の実現目指しコベルコとMSが協業:建設・測量生産性向上展2019(2/2 ページ)
コベルコ建機と日本マイクロソフトは、ICTを活用して、コベルコ建機が目指す、働く人を核に据えた建設現場のテレワークシステム「K-DIVE CONCEPT」構築のため協業する。コベルコ建機が、既に検証を進めている建設機械の自動化ノウハウと、マイクロソフトのクラウド「Microsoft Azure」をプラットフォームにして、AI、IoTなどの各種テクノロジーを掛け合わせ、現場の無人化施工を実現し、建設業における働き方改革を推し進める。
LTE/5Gなど携帯キャリア通信で長距離での遠隔操作も視野に
K-DIVE CONCEPTのプラットフォームには、マイクロソフトのパブリッククラウド“Microsoft Azure”を採用。オペレーションの円滑化、可視化、ならびに効率的なコミュニケーション方法の確立に取り組んでいく。
当日、コベルコ建機のブースでは、同社 技術開発本部 先端技術開発部 部長の山崎洋一郎氏が登壇。山崎氏は「今回、2025年のK-DIVE CONCEPTの実現を目指し、日本マイクロソフトと協業した。K-DIVE CONCEPTでは、ローカル通信で『近距離』、次に『長距離』、最終的に『建機テレネットワーク』の3ステップの開発段階を描いている」と説明。
近距離ではWi-Fi/無線通信を利用し、解体業者のスクラップヤードなど、現場に近い事務所から操作する。第2段階は、LTE/5Gなど携帯キャリア通信で、遠く離れた場所から建機を管理する。最終形では、遠隔オペレータと施工管理者をつなぎ、リアルタイムでの現場情報の確認や出来高管理、作業員のスキルにあった現場との自動マッチングなどを構想し、建機オペレーターの社内研修などバーチャル教習所としての活用も見込む。
テレワークシステムが実用化すれば、「現状の現場と事務所の行き来が頻繁にある建設工事につきものの不効率が改善され、事務所からの遠隔操作だけで済むようになる。2020年から始まる“5G”であれば、東京に居ながら、地方、さらには海外の現場も施工できるようにもなるだろう。そうなれば、移動時間に縛られず、人それぞれの生活時間に合わせた働き方が具現化し、加えて、経験の浅い若年層でも、言語が異なる外国人材でも、建機を扱え、誰もが働ける就業機会につながるはずだ」と期待を寄せる。
日本マイクロソフトのサービス事業本部 デジタルアドバイザリーサービス本部 本部長の鈴木貴雄氏は、「協業によって、建設業界における人材確保の課題を解決すべく、デジタル変革を起こしていきたい。K-DIVE CONCEPTのために、『コミュニケーション基盤』、画像/音声/ジェスチャーの認識やAIによる安全衛生と効率向上などから成る『遠隔オペレーション基盤』、3週間の目標を立ててこれを連続させることで開発を継続する『アジャイル開発基盤』の3つを提供する」と語り、ユーザーエクスペリエンス(UX)の段階から一歩進んで、より多くのユーザーが使えるようなプラットフォームの構築を目指すとした。
マイクロソフトが、建設業にデジタル変革をもたらすことの意義については、「働く方のワークスタイルをどう変えるかについては、これまでオフィス分野では豊富な実績があったが、この知見を生かして建設という新たな領域へと踏み込む。建設業界では、ITを使いこなすのにハードルがあり、さらに今後はコミュニケーションがネックとなるグローバルな人材で現場チームを編成することも増えるはず。言葉の翻訳だけでなく、作業員のジェスチャーをAIで解析する技術なども開発し、K-DIVE CONCEPTでは誰でも無意識レベルでITを使えるようにスマート化していきたい」とコメント。
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