コンビニサイズ、システムキッチンのような医薬品製造設備「iFactory」の研究開発が加速:設備開発
大成建設ら3社は2019年4月、NEDOのプロジェクトに採択された医薬品のモジュール型製造設備「iFactory」の研究開発に参画した。
大成建設、島津製作所、三菱化工機の3社は2019年4月、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による2018年度の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/テーマ設定型事業者連携スキーム」に採択された「再構成可能なモジュール型単位操作の相互接続に基づいた医薬品製造用iFactory(アイファクトリー)の開発」に参画した。このプロジェクトは高砂ケミカルら5社が共同提案したもので、コンビニサイズにシステムキッチンのような高い汎用性を持つ医薬品製造設備の実現を目指す。
高い汎用性を誇る医薬品製造モジュール
iFactoryの共同提案企業は、高砂ケミカルの他、田辺三菱製薬、コニカミノルタケミカル、横河ソリューションサービス、テックプロジェクトサービス。2018年7月から2023年2月までの5年間を実施期間として、従来の製薬プロセスに比べて二酸化炭素排出を大幅に減らすことのできる生産設備を開発し、医薬品のオンデマンド生産を目標としている。
現在の医薬品製造は「バッチ型」が主流。バッチ型は、全ての原料などを反応釜に投入し、物質の反応が全て終了した後に生成物を取り出す。このプロセスを繰り返し、化合物を合成する化成品/化学製品を生産する。複雑な構造を持つ化合物の合成が可能となる一方で、各段階で中間体の分離・生成操作を繰り返すため、多くのエネルギーや労力を必要とする。廃棄物も大量に排出されるといった課題もある。
海外の大手製薬メーカーは、医薬製品を必要な分量だけ生産するオンデマンド生産の手法を複数開発している。しかし、商用生産では品目や生産量の変更に際し、単位操作の入れ替えができないため、機器の再配置や機器間の配管の複雑な組み換えが必要だった。固体の単位操作も扱いにくいこともボトルネックだった。
そこで8社は、反応・洗浄・溶媒交換、晶析・ろ過・乾燥などの必要な単位操作を担う装置をキューブ型のフレームに収納したモジュール型反応装置「iCube」を開発し、原料投入からパッケージングまでを一貫して連続製造するプロセスの確立に取り組んだ。その結果生まれたiFactoryは、このiCubeを相互に連結させて製造ラインを構築する汎用性の高いシステムファクトリー。従来のバッチ型に代わり、原料を連続的に投入し、生成物を他端から連続的に得る「連続合成法」と「バッチ連続型」を組み合わせた「連続生産方式」を採用している。
iFactoryは、原料の変更や生産品目の変更に応じて製造ラインを再構成し、オンデマンド商用生産を実現させる。装置の再構成や配管のつなぎ替えが容易にできる他、固体と液体の混合物の反応・精製、固体の乾燥など、固体の単位操作も実装しているなど、海外の生産設備に比べて優位性が高い。実験室で開発された新たな技術をいち早く実生産へとつなげることもできるなど、技術の応用も幅広いという。
各社の役割は、大成建設が、再構成可能なモジュール型「バッチ連続式ろ過乾燥機」「連続充填(じゅうてん)装置」を開発し、iFactory建屋と用役システム(iConnect)を構築する。高砂ケミカルは、iFactory開発の統括、iCubeフレームの開発、連続晶析-ろ過の単位操作の開発を担当。田辺三菱製薬は置換濃縮プロセスの単位操作、コニカミノルタケミカルは連続抽出(油水分離・洗浄)プロセスの単位操作、横河ソリューションサービスはiFactoryの配電計装ユニット(iFace)をはじめ、制御システム、製造実行システム、品質管理システム、エネルギー管理システムを構築する。
テックプロジェクトサービスはiFactoryの単位操作のうち、連続分液、連続溶媒置換、連続晶析、連続固液分離のiCubeの設計・開発。島津製作所はiFactoryに使用する防爆構造サンプリングユニット、オンライン高速液体クロマトグラフ、分析ユニット(iBox)の開発。三菱化工機は再構成可能なモジュール型「連続ろ過機」「連続乾燥機」を開発し、ろ過機から乾燥機への移送機構を構築する。
また、高砂ケミカルの齊藤隆夫代表取締役社長とインディージャパン、テックプロジェクトサービス、横河ソリューションサービスは「株式会社iFactory」を設立し、同設備の普及を進める。本拠は東京都大田区に置き、資本金は275万円。
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