脱・現地一品生産! 製造業の知見を応用して西松建設がダッソーと目指す「工業化施工」:Archi Future 2025 Playback(2/2 ページ)
西松建設は、ダッソー・システムズとともに、建設業の人手不足や長時間労働を解消するべく、製造業のPLMの概念を取り入れた独自の「工業化施工」で、建設プロセスの改革に着手している。
製造業の知見を建設に応用した「3DEXPERIENCE」
西松建設の挑戦を技術的に支えるのが、ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCE」プラットフォームだ。
ダッソー・システムズは、商用3DCADを世界で初めてリリースした企業でもある。単に設計に3Dを使うだけでなく、製造ラインも含めたライフサイクル全体を管理する「PLM(プロダクト ライフサイクル マネジメント)」という概念を自動車業界向けに提唱し、業界をリードしてきた。現在、航空業界や自動車業界で9割近いシェアを有する製造業の中で培ったノウハウが、建設業界にも展開されつつある。
ダッソー・システムズ 建築・建設業界 ビジネス・バリュー・コンサルタント 森脇明夫氏は、3DEXPERIENCEの特長を「BIMのデータと工程情報、クレーンなどの設備情報を統合して1つのデータセットとして統合でき、再利用可能なことにある」と語った。建設業界の壁だったデータの再利用率の低さが、製造業のシステム構造によって解決に導かれるというわけだ。
西松建設では、建物を“モジュール(ユニット)の集合体”と捉える。部材を工場や現場のヤードで組み立て、施工計画に応じて現場で組み立てる「工業化施工(モジュラー施工)」の手法を採ることで、設計〜製造〜施工のプロセス効率化につなげる。
デジタル上でモジュラー部材と最適化された施工計画を作るには、まずRevitで概略の設計・生産モデルを作る。BIMのオープンフォーマットIFCを介して、ダッソー・システムズの「CATIA」に送り、自動化ツールを使って一部製作図レベルの詳細度のモデルを作る。そのモデルを使ったモジュラー化と施工計画シミュレーションにより、工業化施工を進める。
「工業化施工」の鍵となる「コンストラクションブロック」と自動化の仕組み
西松建設が目指す「工業化施工」で重要なのが、「コンストラクションブロック」という概念だ。配管ユニットや鉄骨階段などの部材をデジタル化したモジュール(ブロック)で、単なる形状情報だけでなく、数量、施工手順、リソースコスト、CO2排出量など多様な情報を含むデータセットだ。モジュールの大きな固まりとしては、ホテルの一室などもある。
ブロックは、1度作れば他の建物でも流用可能で、設置するだけで必要な情報が連動して算出される。そのため、商品部品表や詳細部品表、組み立て図、製作指示書などを自動でアウトプットできる。
前氏は「詳細な3Dモデルのコンストラクションブロックの活用により、Revitでは表現できていなかった接合部や補強プレートなどのモデリングを自動生成することが可能になり、精緻な数量算出が実現する」と利点を説明した。
早期の意思決定を可能にする「4D施工計画シミュレーション」
精緻な3Dモデルのコンストラクションブロックは、次のステップの施工計画に生かされる。西松建設は、工程情報と3Dモデルを統合した「4D施工計画シミュレーション」を早い段階で作成し、顧客への提案に生かす、プロセスを前倒しする“フロントローディング”を目指している。
4D施工計画の作成プロセスでは、まず基礎情報を取り込み、工区内の歩掛や人員などのリソースを定義する。そして工区内シミュレーションを行い、その後に工区ごとのシミュレーション結果を全体工程に反映させて、工事全体の計画が完成する。施工開始後は計画を修正しつつ作業を進め、竣工後は別プロジェクトで施工計画などを再利用する流れだ。
現場の建築情報や工程、人、モノといった情報群を統合した「PPR(Product=何を、Process=どのように、Resource=何を使って)データセット」は、複数の施工計画を迅速に作成して、施主が比較可能になる他、次のプロジェクトにも再利用できるため、現場の数が増えるほど、施工計画の準備期間を大幅に削減できる持続的な効果を生み出す。
複数プロジェクトへの展開を見据えた、スマート現場実現のステップ
西松建設は、2023年から4D施工計画シミュレーションを開始し、2025年度の検証プロジェクトを経て、2026年度から実プロジェクトに適用、その先に複数のプロジェクトでの展開を計画している。3DEXPERIENCEを活用したモジュラー化と半自動的な施工計画シミュレーションを両輪とする「工業化施工」で、単なる生産性向上に留まらず、工期短縮、低コスト化、さらに品質向上や安全性、環境面など、6つの重要要素のQCDSEM全ての面での高度化を見据える。
前氏は、「このような取り組みを通して、西松建設は工業化施工のリーダーとなり、建設業を盛り上げていくことを約束する」と力強く結んだ。
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