建機用フィルター技術を体調管理デバイスに応用、ヤマシンフィルタとミツフジが提携:産業動向
建機用油圧フィルター大手のヤマシンフィルタとウェアラブルIoT製品を販売するミツフジは、戦略的アライアンスによる新製品の開発と社会実装を目的に、資本業務提携を締結した。ヤマシンフィルタが油圧フィルターのろ材開発で培ったナノファイバー技術と、ミツフジのウェアラブル技術を組み合わせ、着るヘルスケアデバイスや次世代電磁波シールドフィルターの製品化と社会実装を目指す。
ヤマシンフィルタとミツフジは2026年7月29日、戦略的アライアンスによる新製品の開発と社会実装を目的とした資本業務提携を締結したと発表した。
ヤマシンフィルタが建設機械用油圧フィルターのろ材開発で培ったナノファイバー技術と、ミツフジのソフトウエア開発/データ解析やウェアラブル技術を融合し、高精度な心電/心拍計測が可能な電極式の着衣型デバイスや通気/放熱性を備えた電磁波シールドフィルタの製品化を目指す。 両社は提携第1弾となる製品群の実証実験を進め、早期の量産体制構築と市場投入を目指す。
提携では、ヤマシンフィルタがナノファイバー技術の提供に加え、電極素材/電磁波シールドフィルタなどの機能素材の開発、量産化を担う。ミツフジは独自の銀めっき繊維「AGposs」やウェアラブル技術、ソフトウェア、データ解析アルゴリズムを提供する。ウェアラブル製品を通じた生体データ収集システムの実装や次世代電磁波シールドフィルタの市場展開を目指し、製品化から量産、販売まで一体で取り組む。
ヤマシンフィルタ 代表取締役 社長執行役員 山崎敦彦氏は、「多くのフィルターメーカーではろ材を外部から調達しているが、当社は自社開発で質の高い製品を提供し、差別化を図ってきた。現在、ナノファイバーを使ったろ材を提供する中で、ごみを取るフィルターとしてだけではなく、熱を遮断し、音や電磁波をカットするなどの特徴を生かした用途があるのではないかと考えた」と取り組みの背景について語った。
ヤマシンフィルタは2026年5月、信州大学とナノファイバーを軸に次世代機能素材の開発と社会実装を目指す共同研究プロジェクト「SHIN-PROJECT」を始動。環境/資源リスク、超高齢化/人手不足、次世代インフラ技術の3領域で、2030年の製品化を見据えた開発に乗り出した。
山崎敦彦氏は「開発した素材を社会実装していくには自社単独では難しい。そこで、ウェアラブルデバイスや電磁波シールドといった分野で先を行くミツフジと戦略的アライアンスを締結した。社会の役に立つ製品を開発し、社会へ実装してく」と提携の狙いを語った。
次世代電極を使用したウェアラブルデバイスを開発へ
また、ヤマシンフィルタ 取締役副社長執行役員 山崎裕明氏は、「フィルターの価値はごみを取るだけではない。当社が取り組むテーマは酷暑時代の体調管理と電磁波干渉の深刻化だ」と述べ、社会実装を目指す背景やターゲットとなる領域について解説した。
山崎裕明氏は「気候変動によって酷暑日が増加し、熱中症リスクが高まる中、感覚に頼らない体調管理として常時モニタリングが今後さらに重要になる。現在普及している光学式のスマートウォッチなどは手軽に脈拍を測定できる一方、より正確な生体情報を取得するには電極式センサーが有効だ」と説明。一方で電極式は、装着時にジェルが必要になるなど着用のハードルが高いことが課題とされている。両社はミツフジのウェアラブル製品にヤマシンフィルタの極薄ナノファイバー技術を組み合わせ、ジェル不要で気軽に利用できる次世代電極の実用化を目指す。
開発製品は、髪の毛の約120分の1の細さのナノファイバーが皮膚の凹凸に追従し、密着することで、身体を動かした際に心電図波形へ混入する体動ノイズを抑制する。繊維間に隙間があるため通気性も高い。ミツフジの「深部体温推定技術」などのアルゴリズムやアプリと一体化させることで、現場の暑熱対策や医療/日常の見守りで、誰もが気軽かつ正確に体調管理できる社会の実現を目指す。
次世代電極を活用したウェアラブルデバイスを実用化すれば、ジェルや胸部ベルトを使わず着るだけで生体データを計測し、自覚症状のない体調不良の予兆を感知できる可能性がある。現場作業中の心電や心拍変動の変化から熱中症リスクを事前に検知することで、リスクの早期把握につながる。
ミツフジ 代表取締役社長 三寺歩氏は「激しい動きの中でも体動ノイズを抑えた高精度な心拍の計測が可能になることで、医療分野で日常生活中のデータを取得するだけでなく、スポーツ分野で練習強度や試合中のコンディションを把握する用途にも利用が見込める」と説明した。
また、製品の形態は大学病院などで試験を進めながら、着衣型とするか、ディスポーザブル電極(身体に直接貼り付ける使い捨て電極型)とするかを含め、市場ニーズに柔軟に合わせる方針を明かした。
「呼吸する電磁波シールドフィルタ」を実用化へ
もう1つの開発テーマが、データセンターなどをターゲットとした電磁波シールドフィルターだ。電子機器を金属で覆う従来の電磁波対策では、電磁波を遮蔽できる一方、通気/放熱ができず熱がこもりやすくなる。両社は、ヤマシンフィルタのナノファイバーの通気構造と、ミツフジの銀めっき繊維の高い電磁波遮蔽性能を融合し、通気性/放熱性を確保して冷却効率を維持しながら、電磁波ノイズを必要水準まで低減する「呼吸する電磁波シールドフィルタ」を共同開発する。狭いすき間や複雑な形状にも、折る/曲げる/貼るといった多様な加工が可能で、布としても利用できる。
データセンター向けだけでなく、電気自動車(EV)やドローンなどのモビリティ領域への展開も視野に入れる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
第8回 国際 建設・測量展:埋設物をバケットで検知 西尾レントオールがCSPIで最新ICT施工と熱中症対策を展示
西尾レントオールは「CSPI2026」で、「i-Construction 2.0」「電動化」「熱中症対策」の3つのテーマでブースを構成した。遠隔操作コックピットや埋設物を検知するバケット、作業員を守るクーラーテントなどを披露し、安全で高効率な現場構築を提案する。
安全衛生:深部体温変化推定と遠隔監視を一体化、熱中症対策を支援 UPDATER
UPDATERの法人向けウェルビーイング事業「みんなワークス」で、深部体温変化を推定するミツフジのウェアラブル端末「hamon band N」と、みんなワークス独自のクラウド遠隔監視を組み合わせた「MADOクラウド猛暑リスク対策パッケージ」の受け付けを開始した。
Japan Drone 2026:点検業務をドローン×AIで劇的効率化 AccuverとENABLERのインフラ点検ソリューション
Accuverは「Japan Drone 2026」にENABLERと合同出展し、インフラ点検ソリューション「SIVION」を紹介した。非GPS環境下でのドローンの自律飛行、0.1ミリのひび割れを検知するAI、国交省様式のレポート自動生成までを一気通貫で支援するワークフローを示した。
リノベ:ZEH改修が睡眠の質や知的生産性を向上、東京建物や慶応大が実証実験の結果を報告
東京建物、慶應義塾大学、YKK APは2025年夏と2026年冬に実施した既存賃貸マンションのZEHリノベーション実証実験の結果を報告した。実証の結果、ZEH改修を実施することで、睡眠効率や集中力の向上につながる可能性が示された。
無線ネットワーク:「金属に内蔵」できる革新的アンテナ技術 パナソニックが無線通信の弱点克服
近年、スマートフォンやカメラなど、通信機能を持つ各種端末は日常生活で欠かせない。世界的にその数量は右肩上がりで、今後もさらなる増加が見込まれる。そうした中でパナソニック エレクトリックワークス社は、無線通信のボトルネックだった「金属」に内蔵できる独自のアンテナ技術を開発し、IoTのさらなる普及を後押しする。
ZEH:築20年のマンションでZEH改修が快適性や健康に与える影響を科学的に検証、東京建物など
東京建物、YKK AP、慶應義塾大学は、都内にある築20年の大型賃貸マンションで、ZEH基準への改修が住む人の快適性に与える影響を検証する実証実験を開始した。ZEHが快適性や健康に与える影響の可視化を目指す。





