建設現場で3Dデータ活用が進まない理由と突破口【ローカスブルー解説】:建設DX研究所と探る「建設DX最前線」(11)(2/2 ページ)
建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。今回はローカスブルーが、建設業界で期待が高まる3Dデータ活用に着目し、なぜ現場で定着しにくいのか、そして今後どのような形で業務に組み込んでいくべきかを解説します。
3Dデータ活用が定着する現場は何が違うのか
活用が進み始めている現場に共通することは、機能の多さよりも、使いやすさと一貫性を重視していることです。例えば、関係者が同じデータを見ながら議論できること、専門部署だけで閉じずに現場担当者も扱えること、工程をまたいでデータが受け渡されることです。こうした業務設計ができている現場では、3Dデータの捉え方が「一部の技術者のための情報」から「現場全体の判断材料」へと変わっています。
近年は、クラウド環境での処理や共有、作業負荷を下げる自動化、関係者間の閲覧性向上などを通じて、これまでよりも扱いやすい3Dデータ活用の形も広がりつつあります。重要なのは、技術を導入することそのものではなく、「現場の業務フローの中で無理なく使われ続ける」ことです。
ポイントは「技術導入」ではなく「業務設計」
建設DXで成果を出している企業に共通することは、ツールの導入で終わらず、業務設計まで踏み込んでいる点です。現場で使えるレベルまで操作や運用をシンプルにし、特定の人材に依存しない体制をつくり、工程横断でデータをつなぐ。こうした設計があって初めて、デジタル技術は業務改善に結びつきます。
3Dデータ活用も同じです。高精度なデータを取得すること自体が目的ではなく、そのデータが現場で意思決定やコミュニケーション、確認業務にどう使われるかが重要です。DXの本質は、デジタルツールを入れることではなく、誰でも使える形で業務に組み込むことにあります。
今後の建設DXに必要な視点
これからの建設業界では、3Dデータはさらに重要な役割を担っていくことが予想されます。人手不足が続き、現場管理や維持管理の負荷が高まる中で、データを基盤にした業務運営への転換は避けて通れません。だからこそ必要なのは、「どのツールを使うか」という視点だけではなく、「現場でどう定着させるか」という視点です。
小さく始めて広げること、現場主導で運用できること、データを一過性の成果物ではなく資産として扱うこと。こうした考え方が、今後の建設DXには欠かせません。3Dデータは、単なる先端技術ではなく、現場の生産性と持続可能性を支える基盤になりつつあります。建設業界における次の論点は、導入の有無ではなく、どうすれば現場で使い続けられるかというフェーズに移っているのではないでしょうか。
著者Profile
宮谷 聡/Satoshi Miyatani
ローカスブルー 代表取締役社長。
東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻修了後、フランスISAE-SUPAEROへ進学。東京大学総長賞受賞。フランスのAIRBUSにてエンジニアとして勤務後、シリコンバレーのAirware、イスラエルのAiroboticsなどの海外スタートアップで唯一の日本人として経験を積む。2019年10月に日本帰国後、ローカスブルーを創業し、土木建設業向け3Dデータ解析プラットフォーム「ScanX(スキャン・エックス)」を提供。2024年に東証プライム企業であるゼンリンにグループイン。
2021年東洋経済すごいベンチャー100選出。i-Construction大賞「国土交通大臣賞」受賞。2022年Forbes Japan Rising Star Award受賞。
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