土木技術者が自らアプリを作れる時代へ 「AIコーディング」で加速する土木DX:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(40)(2/2 ページ)
自然言語でプログラムを作成する「AIコーディング」が土木業界にも波及してきている。内閣府のSIPプロジェクトでは橋梁の3Dモデル生成や損傷管理に適用され、現場ではスマホ写真の自動地図マッピングなど、技術者自らが業務アプリを試作する動きが進んでいる。
自然言語で橋の3Dモデルを生成し、損傷情報も管理
360度画像とBIM/CIMなどの3次元モデルを重ね合わせることができれば、損傷の分析などに有効です。下図左は、「橋長30メートルの鋼I桁橋を作って」「主桁を2本から3本に変更」などの言葉の指示で橋の3次元モデルを生成し、「腐食損傷を一番左の桁の外側の端部に入れて」などの自然言語で損傷情報の管理を可能としたものです。下図右では、3次元モデルを利用して構造解析のモデルを生成し、設計荷重をかけて変形を計算しています。
このように多様な機能を連携させた利活用の試行検討が、AIコーディングエージェントを利用することで容易に実現します。
下図は、アルカリ骨材反応(ASR)に伴う帯鉄筋の破断※7によるせん断耐荷力の低下を3次元モデル上で算定して可視化した例です。AIコーディングによって、特殊な状況を想定した個別な条件やさまざまなパターンを試行しやすくなっています。
※7 阪神高速道路「阪神高速技術のチカラ:アルカリ骨材反応対策(4/5)」
現場技術者が「自分用の業務効率化アプリ」を作る時代に
研究分野だけでなく、プログラム経験のほとんどない技術者が、自らの業務を効率的にするために現場でAIコーディングを活用しているケースもあります。下図は、スマートフォンで撮影した写真の位置情報(緯度/経度)を自動で読み取り、地図上に写真を表示して、写真の整理やデータの蓄積ができるシステムを試作したものです。
これまでは難しかった機能連携や個別の現場業務を支援するプログラムが、比較的容易に試作できるようになってきました。優れたツールが登場すれば、精度や信頼性に加え、汎用性や安定性を検証し、拡張性やセキュリティ対策などの機能も実装することで、ソフトウェア製品にまで昇華させることも期待できるでしょう。
現場の多様なニーズに応じた試作や試行を、土木技術者が自ら行えるようになることで、多種多様なツールが次から次へと現れてくるようになるでしょう。新たなニーズが明らかになるにつれて、ソフトウェアの適用場面もさらに拡大し、建設産業全体の生産性も大幅に向上すると予想されます。建設現場の身近な課題解決に、ぜひ身近な課題解決にAIコーディングを取り入れてみてはいかがでしょうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
日本列島BIM改革論〜建設業界の「危機構造」脱却へのシナリオ(14):BIMの限界を突破 “IM”へ進化を促す新しい活動「BIM Innovation HUB」始動!(その2)
BIM Innovation HUB が活動を開始し、Webサイトを公開した。前回は、本活動のメインコンセプトと、主な機能のうち2つを紹介した。今回は、残る機能となる「参照情報」「共有資源」「BIM成熟度調査」について説明する。BIM Innovation HUBでは、今後5つの機能をさらに拡充させてゆくことで、情報マネジメントに対応するための知識や実践的な手掛かりを得られる場としていきたい。
“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(39):土木×AIの「勝ち筋」とは? インフラや災害対応で進む“フィジカルAI”
政府の「人工知能基本計画」策定を受け、海外に後れを取るAI分野で反転攻勢の機運が高まっています。日本の建設業界でも、既に膨大な学習データを保有しているインフラの維持管理などで、フィジカルAIの適用が進んでいます。土木分野でAI活用の「勝ち筋」とはどのような形があるのか、最新論文を引用しながら探ります。
AI:設計図書から工程表を自動作成するAIエージェントの製品版を提供
KENCOPAは、設計図書を読み解き工程表を作成するAIエージェントの製品版を提供開始した。全体工程表の作成を最短約15分に短縮できる。
AI:380自治体の議会議事録をAI分析、公共工事の発注予兆をキャッチする「Info Hub」
Info Hubは、全国約380自治体の議会議事録をAIで分析し、サウンディング調査や入札公告の議論段階にあたる川上で公共事業の兆候を捉える新規案件探索サービス「Info Hub」をの提供開始した。従来の建設専門紙や入札データベースなどの事業確度の高い公共工事の発注情報ではなく、議論段階から新規案件情報を集められ、個人の人脈や経験にも依存しない。
xR:石神井川工事に採用、竹中土木も導入した「作る前に直す」リコーの設計検討VRサービス
建設業界でもVRやARなどのxRサービスが安全教育や内見、設計レビューなどで活用が進む中、リコージャパンはコスト増や工期延長に影響を与える「設計検討」にフォーカスしたVRサービスを提案する。BIM/CIMや点群をもとに生成したVR空間では、特許取得済みの独自インタフェースや音声入力、ツアー移動、VR酔い防止などの豊富な機能を備える。既に東急建設や竹中土木などが先行導入し、発注者含む関係者の情報共有や現場ライブ中継のVR監視などに活用した。
i-Construction 2.0:建機の遠隔操縦で映像遅延がわずか0.05秒 IIJがi-Con 2.0向けに通信環境を提案
IIJエンジニアリングとハイテクインター、ジツタ中国は、東京都神田のオフィスから茨城県つくば市に配置した建機を遠隔で操縦する実証実験を行った。これまで課題だった信頼性の高いネットワークの構築や複数カメラ映像の伝送、映像遅延などを衛星通信のStarlink2台と2種類のフレッツ光回線を用いた独自の通信技術で解消した。映像の乱れも抑制する高品質かつ超低遅延の通信環境を提供し、i-Construction 2.0に対応する建機の遠隔施工を後押しする。
CIM:現況3D画像とBIM/CIMモデルを統合、施工管理を効率化 東急建設が全国10カ所で試行
東急建設は、Matterportの3Dスキャンカメラとクラウドサービスで取得した現地の3Dウォークスルー画像に、計画中の3Dモデルを重ねて閲覧できる統合システムを独自開発した。現在、渋谷駅やとうきょうスカイツリー駅など、全国10カ所の土木/建築現場で試行導入している。



