海上保安庁が日本周辺の海底を“マインクラフト”の世界で再現 ワールド無料公開:デジタルツイン
海上保安庁は、日本周辺の海底地形データを基にした「Minecraft」のワールドデータを公開した。普段は目にすることのできない、マリアナ海溝や西ノ島などをゲーム内で疑似探検できる。
海上保安庁 海洋情報部は2026年5月12日、日本周辺の海底地形データを基に作成した「Minecraft(マインクラフト)」用のワールドデータを公開した。普段は目にすることのできない深海の世界をゲーム内で疑似探検できる。建設業界でも進む3D地形データのゲーミフィケーション(ゲームへの応用)の好例となる試みだ。
海上保安庁は、航海の安全や海洋権益の確保、防災といった目的のために、日々日本周辺の海底地形を調査している。そこで得られた膨大なデータは、船の航海に欠かせない「海図」の作成などに使われている。
公開したワールドデータは、こうした海底地形データを基に作成。通常では交通手段がない離島の周辺、生身の人間では決して見ることのできない深海底の地形をマインクラフトのブロックの世界に落とし込んだ。
データは、PC向けの「Java版(214MB)」と、各種ゲーム機やスマートフォンなどに対応する「統合版(226MB)」の2種類を用意し、特設Webサイトから無料でダウンロード可能だ。海上保安庁や関係機関が調査したデータを利用しているが、あくまでゲームとして遊ぶために作成したものであり、地形の形状や縮尺は現実とは異なる仕様となっている。
特設Webサイトでは「遊び方」のヒントとして、特定の名所に瞬時に移動できるブロック座標(X/Y/Z)も公開。世界で最も深い場所とされるマリアナ海溝の「チャレンジャー海淵(かいえん)」や活発な火山活動によって拡大を続ける「西之島(火山島)」などの座標情報を掲載している。ユーザーはゲーム内でコマンドを入力するだけで、特定の海底地形や島々にテレポートし、自由に探索を楽しめる。
近年、建設業界では、測量で得た3D点群データやBIM/CIMモデルをマインクラフトにインポートし、リアルと仮想のデジタルツインで、住民説明会や子ども向けのワークショップに活用する事例が増えている。
一例として国土交通省 関東地方整備局 江戸川河川事務所では、「防災地下神殿」とも称される埼玉県春日部市の治水施設「首都圏外郭放水路」をマインクラフトの世界に構築。実際の設計図をベースに、現実にある放水路の巨大な立坑や壮大なスケールの調圧水槽、排水ポンプ設備などをマインクラフト用に落とし込み、施設の周知や防災学習に役立てている。
今回の海上保安庁の取り組みも、専門的で親しみにくい「海底地形データ」を広く一般層に届ける優れたアプローチといえる。海洋土木や港湾工事に関わる建設技術者にとっても業界周知のヒントとなりそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
海中ロボットで能登半島地震後の富山湾内を調査、海底地形やシロエビの生息など把握
富山県 農林水産総合技術センター 水産研究所は、ホバリング式自律型無人探査機「ほばりん」と海底設置型観測装置「江戸っ子1号」の海洋ロボティクスで、能登半島地震後の富山湾内の状況を調査する。
3D海底地形データと沖縄発のGPS端末で海難事故の救助活動を実証、パスコとクアドラプランニング
パスコとクアドラプランニングは、両社が培ってきた専門技術である詳細な3次元海底地形データと沖縄で開発されたGPS端末を活用した実証実験に着手した。実施場所は、サンゴ礁があり、マリンレジャーが盛んな沖縄県座間味島沿岸部で、さまざまな状況を想定して行った。
森に覆われている地形のドローン調査も実現 LiDARをアプリ込み81.2万円で発売
マプリィは、DJI製ドローン「Matrice 350 RTK」に取り付けられるLiDARセンサー「mapry M1」を81万2000円で発売した。従来はドローン機体とのセット販売のみだったが、既に機体を所有しているユーザーからの要望に応えるべく、データ処理アプリを含むレーザー単体で提供する。建設予定地で樹木や植生があり、空撮ドローンでは見えない土地形状の現況調査も可能になる。
スマホで地形測量を実現、作業を90%短縮した大林組の新アプリ
大林組が地形測量が行えるスマートフォンアプリを開発。従来の計測機器を利用した手法より作業時間を90%以上も短縮でき、その場ですぐに3次元データも閲覧可能だという。
30分で東京ドーム15個分を空から計測、UAVレーザー測量システム「UL-X1」9月発売
TIアサヒは、UAVレーザー測量システム「UL-X1」を2025年9月上旬から販売開始する。DJIドローンにLiDARセンサーとカメラの計測ユニットを搭載し、飛行時間が前機種と比較して約3分延長。1回のフル充電で約73ヘクタールを計測する。
点群とAIを土木の設計や維持管理に応用する最新の技術動向【土木×AI第23回】
連載第23回は、土木領域の設計や施工、維持管理などで活用が広がっている「点群」にスポットを当てます。点群から形状を抽出する方法や施工前後の比較、深層学習を用いた「セマンティックセグメンテーション」で地物を分類する研究などを紹介します。



