BIM活用のLife Cycle Management 戸田建設の新本社ビル「TODA BUILDING」での実践例:BIM×FMで本格化する建設生産プロセス変革(12)(2/2 ページ)
本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。本稿では、戸田建設の新本社ビル「TODA BUILDING」で試行した建物のライフサイクル全体にわたるBIM活用の実践例を紹介する。
2.運用段階でのBIM活用
運用段階では、施工段階で作ったBIMモデルから「維持管理BIM」を作成した。現在、維持管理BIMデータを活用した「FM管理システム」を試行している。
2-1.維持管理BIMの作成
維持管理BIMの作成に当たって、施工段階で“設備機器の機器番号を属性情報へ入力”した。他の属性情報の入力も検討したが、最終決定しない限り確定情報とならないため、必要最低限の“機器番号の入力”までとした。また、機器番号を入力しておくことでBIMデータからCSV出力が可能となり、Excelで編集するときに紐(ひも)づける“キー”と位置付けた。
竣工3カ月前からは、実際に管理運営を行う会社と隔週で打合せを重ねた。主に協議した内容は、1.モデルの作成範囲、2.属性情報の入力内容、3.竣工図書のハイパーリンク先、4.設備システムの見える化などだ。また、ビル本体の取扱説明会の前に、施工BIMモデルを用いて設備主要機器の設置場所や内容を説明し、現地を見るときの理解を深められるようにも配慮した。
作成期間は、竣工図(2D図)の作成と竣工図書のとりまとめが完了した2025年4月から10月までの半年間だった。BIMモデルは1棟丸ごと作成するとデータ容量が非常に大きくなるため、フロアーごとに作成。建築、電気、機械、部屋の各モデルを作成し、建築モデルは簡易モデルを作成したが、電気・機械モデルはほぼ施工BIMモデルとした。これは管理会社との打合せにより、「配管、ダクト、ケーブルラック、バルブなどは全てあった方がよい」と要望されたためだ。最後に、BIM操作の取扱説明書を作成し、取扱説明会で管理会社と維持管理BIMの共有を図った。
2-2.FM管理システムでの活用
作成した維持管理BIMのデータを基に、管理会社を交えてFM管理システムの活用も実施している。FM管理システムは、FMシステムの「FM-Integration」とプロパティデータバンクの「@property」を使用。FM管理システムへ維持管理BIMの取り込む際の作業した内容を下表にまとめた。FM管理システムは、2026年2月から試行している。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| BIMデータファイルの変換 | FM管理システムでは取り込みファイルの形式が決まっているので、BIMデータのファイル変換を行った | 変換ファイルを確認する |
| BIMとFM管理システムの紐づけ | BIMとFM管理システムの紐づけができるように、BIMの属性情報にIDの入力を実施した | |
| BIMデータ容量の軽量化 | FM管理システム取り込みにおいて、BIMデータの容量制限があったため、BIMデータの軽量化を行った。建築モデルは再作図、設備モデルはダクトなどの削除を行って対応した | |
| Excelで台帳を作成 | FM管理システムに入力する内容の一部をExcelで台帳として作成した |
維持管理BIMとFM管理システムの使い分けは、下記のように考えている。
ここまで、TODAビルでのライフサイクルにおけるBIM活用の事例について述べてきた。今後の課題として、維持管理BIMの更新をどのように運営していくかが挙げられる。更新頻度、更新後のFM管理システムへの再取り込みなどの方法を検討していく予定だ。維持管理DXとして、ここで紹介したBIMやFM管理システムを活用し、実際の使用者からの意見をフィードバックしながら運用を進めていく。将来は、BIMとCCDFセンシングを連携させ、“デジタルツイン”も構築したいと構想している。
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