6割が「将来実家が空き家に」と予測! 他が断る“ワケあり空き家”を買い取るネクスウィルの戦略:空き家問題(4/4 ページ)
新生活で実家を離れた人の約6割が「将来実家が空き家になる」と回答――。大相続時代を迎え“実家じまい”が社会課題化する中、空き家不動産スタートアップのネクスウィルが、独自の買取サービスや自治体連携、「水戸ホーリーホック」などスポーツチームとの協働による解決策を提示した。
自治体連携で空き家の流通を促進
ネクスウィルは、空き家に悩む消費者向けだけでなく、地方自治体との連携にも注力している。丸岡氏によれば「買取事業は、自社だけが頑張っても地域の空き家問題の解消はなかなか進まない」からだ。その成果として現在までに、全国16の自治体と連携協定を結んでいる。
連携の基本スキームは、自治体が把握している空き家情報をネクスウィルに提供し、所有者へ提案や査定を行うというものだ。買い取った物件は投資家ネットワークを通じて流通させ、賃貸戸建てとして再生している。
また、総務省の「地域活性化起業人(副業型)」制度を活用し、自治体に月4日、社員を派遣する取り組みも進めている。自治体が把握する空き家情報を民間事業者に提供する際には、所有者の同意取得がハードルになるためだ。そこでネクスウィルの社員が自治体職員に近い立場で所有者と接点を持ち、相談対応を進めることで、空き家の流通につなげようとしている。その結果、岩手県紫波郡紫波町では、把握している空き家が約400件あった一方、2024年9月から2025年6月までにネクスウィルへ紹介された物件は8件にとどまっていたが、2025年7月から2026年3月までに制度を活用したところ、25件の相談を受け、そのうち13件が買取につながったという。
こうした自治体連携の先に見据えるテーマとして、丸岡氏は「2地域居住」を挙げた。地方移住には心理的なハードルがある一方、ここ数年は平日は都市部で暮らし、週末だけ地方で過ごす形、夏休みに子どもが地方で学校生活を体験する「デュアルスクーリング」に関心が高まっている。
ただし、地方では受け皿となる戸建て賃貸そのものが不足している。丸岡氏は「ネクスウィルが買い取り、リフォームした物件を自治体が2地域居住向け住宅として借り上げることで、供給と需要を結び付けられる。こうしたマッチングを通じて地方の関係人口を増やし、地方創生にもつなげていきたい」と展望を語った。
スポーツチームとの連携で空き家相談の裾野を広げる
ネクスウィルがもう1つの地域密着型の取り組みとして進めているのが、茨城県水戸市を拠点とするJリーグクラブ「水戸ホーリーホック」をはじめとするスポーツチームとの連携だ。
水戸ホーリーホックとは、空き家対策プロジェクトを進め、相談窓口をスポーツチームが担うことで、地域課題に向き合う新たなモデルづくりに着手。さらに、空き家の利活用策として民泊事業にも取り組む。水戸市では観戦目的で訪れるサポーターの宿泊需要があるが、市内の宿泊施設には限りがある。空き家を民泊として活用することで、宿泊先を増やし、観戦後の滞在や飲食の機会を広げ、地域経済への波及効果も期待できる。
スポーツチームとの連携は、空き家相談の入り口としても効果を上げている。青森県八戸市をホームタウンとするアイスホッケーチーム「東北フリーブレイズ」のホームゲームで空き家相談会を開催したところ7組の相談があり、そのうち5件が買取につながった。丸岡氏は、「スポーツチームと連携しているから信頼できると話す来場者が一定数いた」と振り返り、不動産業者に相談する心理的ハードルを下げる効果があると推察した。
丸岡氏は、水戸ホーリーホックとの取り組みを先行事例として、今後は全国の地域密着型スポーツチームへ横展開していきたい考えを示した。「スポーツチームの発信力とブランド、自治体の信頼、そしてネクスウィルの専門知識。三者が組み合わさることで、空き家課題の解決に向けたこれまでにないモデルになる」と抱負を語った。
空き家問題を“自分ごと”として捉える時代に
最後に丸岡氏は、「空き家問題は決して一部の人だけの問題ではなく、誰もが将来直面し得る身近な課題だ」と再度強調。その上でネクスウィルは今後も、他社に断られた物件も含めて対応する専門事業者として、所有者、自治体、地域と連携しながら課題解決に取り組んでいく考えを示し、勉強会を締めくくった。
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