BIMの限界を突破 “IM”へ進化を促す新しい活動「BIM Innovation HUB」始動!(その1):日本列島BIM改革論〜建設業界の「危機構造」脱却へのシナリオ(13)(3/3 ページ)
2023年に開始を目指すと述べてから一定の時間を要したが、このたび日本国内でのBIM推進の非営利団体「BIM Innovation HUB」が始動し、Webサイトを公開した。本活動のメインコンセプトは、日本の建設業界の危機構造から脱却するために、「BIMからIM(情報マネジメント)への進化を促す」ことにある。
機能2 IM(情報マネジメント)用語の解説
IM(情報マネジメント)用語の解説は、建設分野での情報マネジメント(IM)の正しい理解を促進するために、主にISO 19650で用いている用語を中心に体系的に解説している。
ISO 19650は、情報マネジメントの国際的な共通枠組みを示す規格で、そこで定義される用語や概念を正しく理解すること自体が、情報マネジメントの本質を理解することにつながる。しかし、こうした用語や概念は日本ではあまり使われておらず、それがISO 19650の理解を妨げている。そのため、本サイトでは、各用語について独自の視点から説明している。
また、ISO 19650は日本語訳も発行されているが、英語による原本の意図が十分に反映されていない部分もある。翻訳によるニュアンスの違いも、IM用語の解説で説明している。
一例として、「主要意思決定ポイント」の解説を紹介する。主要意思決定ポイントは、情報マネジメントで極めて重要だが、日本ではあまり使われていない。ISO 19650-1の3.2.14では、「ライフサイクルの中で、資産の方向性または実行可能性にとって重要な意思決定がなされる時点(※プロジェクトの間、これらは一般的にプロジェクト段階に沿う)」と定義されているが、それだけでは理解できない。
例えば基本設計の終了時に成果物のレビューを行い、その情報を承認したうえで完成した情報を受領する。その承認をもって、次の実施設計の作業へと進められる。このように意思決定ポイントごとに、必要な情報を明確に定義し、それをタスクリストとして計画し、共通データ環境(CDE)上で確実に生産/管理することが、ISO 19650の情報マネジメントだ。
つまり、意思決定ポイントを理解することこそが、ISO 19650の情報マネジメントを理解するための基礎となる。このような視点から、IM用語を解説しており、今後は少しずつ解説の幅を広げていきたい。
機能3〜5の参照情報、共有資源、成熟度調査については次回に説明を譲りたい。
著者Profile
伊藤 久晴/Hisaharu Ito
BIMプロセスイノベーション 代表。前職の大和ハウス工業で、BIMの啓発・移行を進め、2021年2月にISO 19650の認証を取得した。2021年3月に同社を退職し、BIMプロセスイノベーションを設立。BIMによるプロセス改革を目指して、BIMについてのコンサル業務を行っている。また、2021年5月からBSIの認定講師として、ISO 19650の教育にも携わる。
近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)、「Autodesk Revit公式トレーニングガイド第2版」(共著、2021/日経BP)。
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