シールドマシン掘進時の振動を低減する総合技術「サイレントシールド」を大成建設が開発:製品動向
大成建設は、都市部でのシールドトンネル工事で、シールドマシン掘進に伴い周辺地盤などに振動が生じた際に、発生原因の即時特定と最適な対策を迅速に実施し、周辺環境に及ぼす影響を大幅に低減する総合技術「サイレントシールド」を開発した。
大成建設は2026年3月4日、都市部のシールドトンネル工事で周辺地盤などに振動が生じた際、発生原因を即時に特定し、最適な対策を迅速に実施して周辺環境への影響を低減する総合技術「サイレントシールド」を開発したと発表した。
都市部のシールドトンネル工事では、周辺に住宅や既設構造物が近接する施工が多く、シールドマシンの掘進時に発生する地盤振動が施工上の制約要因となる場合がある。特にトンネル断面が大きくなるほど周辺環境への影響も大きくなるため、施工条件に応じた迅速で的確な対応が求められる。
しかし、振動の発生要因は施工区域ごとに異なる地盤性状に加え、掘進によるマシンの挙動やマシン外殻と地山との摩擦など複数の要因が複雑に関係する。振動発生の引き金となるトリガー振動などの発生原因を迅速かつ定量的に特定することが課題となっていた。
大成建設は今回、マシン掘進に伴い発生する振動を常時計測し定量的に把握/可視化するモニタリングシステム「サイレントナビ」により、発生個所と原因特定、対策実施までを一体化した総合技術「サイレントシールド」を開発した。
サイレントナビは、シールドマシン内に設置した加速度計、変位計、圧力センサーなど複数のセンサーにより、掘進時の振動をリアルタイムに収集/解析するモニタリングシステム。掘削部付近や後胴部付近などマシン内の複数箇所の振動をトレンドグラフとしてモニターに常時並列表示することで、トリガー振動を可視化する。常時モニタリングにより、振動発生が地山掘削か周辺摩擦のいずれに起因するのかを即時に判定できるため、カッター回転数の調整や適切な位置への滑剤充填など有効な対策を選定し実施できる。
サイレントナビは大成建設が施工する4現場で適用し、モニタリング判定結果に基づき最も効果的な対策を現場で実行した。
振動原因がマシン外殻と地山との摩擦である場合には、低摩擦高性能滑剤「サイレントゲル」を用いて周辺摩擦を低減する。サイレントゲルは独自配合により、高い潤滑性による滑りやすさ、低粘性による充填しやすさ、低浸透性による効果持続性の3つの性能を同時に満たす。
サイレントゲルの適用により、マシン外殻と地山の間で生じる周辺摩擦によってマシンが静止と滑りを交互に繰り返すスティックスリップ現象を抑制できる。室内模擬実験では従来品と比べ振動加速度を約50%低減する性能を確認した。実施工現場でも振動加速度レベルを7dB低減するなど、周辺摩擦低減と振動抑制の効果を確認している。
新技術は、国土交通省九州地方整備局発注の「鹿児島3号東西道路シールドトンネル(下り線)新設工事」に適用し、現場での実用性と振動低減効果を確認した。
今後は適用現場を拡大し、シールドトンネル工事における振動低減技術として現場適用の標準化を目指す。またマシン掘進時の姿勢自動制御など新たな対策技術の開発も進め、都市部でのトンネル施工における周辺環境への配慮と都市インフラ整備の推進につなげるとしている。
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