鉄骨製作工場で製造できる従来比10倍寿命の制振ダンパーを開発、竹中工務店とNIMS:制震
竹中工務店とNIMSは、高層建築を長周期かつ長時間の地震から守る「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」を共同開発した。製造時に特殊設備が不要で、一般的な鉄骨製作工場で製作できる。東京都中央区で建設中の長瀬産業東京本社ビルに初適用した。
竹中工務店と物質・材料研究機構(NIMS)は2025年12月3日、高層建築を長周期かつ長時間の地震から守る「H形断面ブレース型FMS合金制振ダンパー」を共同開発したと発表した。2026年の竣工を目指し、建設を進める東京都中央区の長瀬産業東京本社ビルに初適用した。
一般的な鋼材ダンパーと比べ、約7〜10倍の疲労寿命
ダンパーは、FMS合金製のH形断面芯材を補剛鋼管で覆った簡素な構成で、製造時に特殊設備が不要なため、一般的な鉄骨製作工場で製作できる。
FMS合金は、Fe(鉄)を主成分として高濃度のMn(マンガン)やSi(ケイ素)などを添加した疲労耐久性に優れる鉄系形状記憶/高耐疲労合金。指定建築材料として2022年に国土交通大臣認定を取得している。
鉄を主成分とするFe-Mn-Si系FMS合金の疲労耐久性を活用することで、従来型と同レベルのエネルギー吸収性能を維持した。FMS合金芯材は変形時のひずみを分散し、疲労き裂の進展を抑える特性を有する。通常の鋼材ダンパーと比べ、約7〜10倍の疲労寿命を有する。
竹中工務店は芯材や補剛鋼管の最適設計と構造性能評価を担当し、疲労試験で良好な変形性能を確認した。NIMSは専用溶接材料を用いた溶接条件を設定し、FMS合金の耐疲労性を引き出している。
長瀬産業東京本社ビルはS/RC/SRC造地下2階/地上14階建て(高さ62.95メートル)で、延べ床面積は2万6218.86平方メートル。設計・施工は竹中工務店で、高さ約63メートルの制振構造の中に新型ダンパー18基を配置した(粘性ダンパーと併用)。執務空間を妨げない設置スペースを確保しながら、地震後の事業継続を重視した制振計画を構築している。
両者はこれまでも、FMS合金を用いた制振ダンパーとして、2019年に平板形の芯材をモルタルと鋼管で補剛した「平鋼断面ブレース型」を、2023年にはエネルギー吸収性能を約2倍に向上させた「十字断面ブレース型」を開発している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
プロジェクト:仙台に延べ1.2万平方mの高機能賃貸オフィスビルが完成、鹿島建設
鹿島建設は、宮城県仙台市に地上11階建ての高機能賃貸オフィスビル「NANT仙台南町」を開業した。開発から設計・施工まで鹿島建設が一貫して手がけた。
木造化/木質化:西松建設の木造ハイブリッド5階建て大学施設など2件が採択、国交省「優良木造建築物事業」先導枠
国土交通省は、2025年度の「優良木造建築物等整備推進事業」先導枠に、西松建設の木造/S造ハイブリッド5階建て大学施設プロジェクトと、三井不動産の上層4層を木造化した11階建て事務所ビルのプロジェクトを採択した。
耐震:名古屋「栄トリッドスクエア」に電気不要の新制震ダンパー「HiDAX-Re」初適用 鹿島建設
鹿島建設は、建物制震用オイルダンパーとして世界最高レベルの制震性能を発揮する、電気不要の環境配慮型オイルダンパー「HiDAX-Re」を開発し、愛知県名古屋市で施工中の「栄トリッドスクエア」に初適用した。
耐震:築37年の東京証券取引所ビル本館で耐震バリューアップ工事、鹿島建設など
平和不動産、三菱地所設計、鹿島建設は、東京都中央区の「東京証券取引所ビル本館」で耐震バリューアップ工事を実施し、耐震性能を最新鋭の超高層ビルと同等レベルまで向上させた。
カーボンニュートラル:生涯CO2収支ゼロ目指す戸建て住宅発売、自社製品由来の再エネ活用 旭化成ホームズ
旭化成ホームズは、住宅の生涯CO2収支ゼロを目指す戸建新商品「earth-tect」の販売を開始した。自社製品由来の再エネ電力や環境価値を活用する。
リノベ:世田谷区に現存する築250年の「旧用賀名主邸」、意匠を保存しつつ耐震改修で再生
名主邸」を三井不動産グループの総合力で、“経年優化”の考えに基づき再生した。伝統的構法の建物にも適用できる制震システム「Hiダイナミック制震工法」を採用し、屋根材を瓦から金属素材に葺き替えて軽量化も図り、伝統的な建物意匠を最大限保存した。


