空洞点検ロボと劣化予測技術で下水管路維持管理を高度化、熊本市で実証中：スマートメンテナンス

前田建設工業、熊本市上下水道局、管清工業の3者は、硫化水素の生成から劣化までをシミュレーションで診断する「硫化水素劣化予測診断技術」と、管路周辺の空洞調査を行う「無人点検ロボット技術」の有効性を検証する実証を開始した。

[BUILT]

　前田建設工業は2025年11月28日、熊本市上下水道局、管清工業と連携し、下水管路の劣化診断と点検を高度化する新技術の実証を開始したと発表した。新技術は2026年3月頃の実用化を目指す。

硫化水素劣化予測診断技術と空洞点検ロボット技術の有効性を検証

　3者は熊本市中央区で実施している「熊本市下水道管路施設包括的維持管理業務委託（熊本市包括）」をフィールドに、2025年9月から、硫化水素の生成から劣化までをシミュレーションで診断できる「硫化水素劣化予測診断技術」と、無人で管路内から管路周辺の空洞を調査できる「空洞点検ロボット技術」の2つの技術の有効性を検証している。

　実証は、熊本市包括における中継ポンプ場、マンホールポンプ、伏越し部の合計79カ所を対象に実施。硫化水素劣化診断技術では、国際水協会（IWA）が示す硫化水素生成予測手法「WATSモデル」を用いて微生物による管路の劣化予測を評価する。また、管路や人孔の設置年度、材質、管径／深度といった基本情報に加え、定期点検で把握した劣化状況や汚水／汚泥のサンプリング分析による微生物の地域性を反映することで、従来は考慮が難しかった要素まで踏まえた管路全体の劣化予測をシミュレーション可能とする。今後、リスクに応じた最適な更新／更生計画の策定への活用を目指す。

シミュレーション画面（開発段階）　出典：前田建設工業プレスリリース

　空洞点検ロボット技術では、無人で管路内の天井部を走行できる点検ロボットを活用し、道路陥没などの重大事故につながるリスクのある管路周辺の初期空洞を計測する。電磁波レーダーを用いて管路内から直接管路背面（管路外側）の空洞を調査するため、調査員の立ち入りが困難な管路でも安全に調査できる。さらに、硫化水素劣化予測診断で高リスクと判断された特定の管路に対する予防保全のための状態監視技術としての活用も見込んでいる。

空洞点検ロボット技術（開発段階）　出典：前田建設工業プレスリリース