PFOSとPFOAの吸着処理が行える新システム、前田建設工業:汚染水処理技術
インフロニア・ホールディングスグループの前田建設工業は、メタウォーターと共同で、イオン交換樹脂を用いた水中のPFOS・PFOA吸着処理システム「De-POP's ION」を開発した。今後、前田建設工業は、日本各地で顕在化が予測される土壌や地下水浄化のニーズに対しても、これまでに開発してきた地盤改良や揚水技術、土壌洗浄工法とともにDe-POP's IONを提案する予定だ。
インフロニア・ホールディングスグループの前田建設工業は、メタウォーターと共同で、イオン交換樹脂を用いた水中のPFOS・PFOA吸着処理システム「De-POP's ION(デポップスイオン)」を開発したことを2022年11月21日に発表した。
イオン交換樹脂の代わりに粒状活性炭を活用することも可能
PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、有機フッ素化合物の一種として、その特性(水や油をはじく、熱や薬品に強い)により、広く撥水材、コーティング剤、消火剤などに活用されてきた。一方、昨今は、両化合物の生物蓄積と毒性影響が懸念されはじめ、国内外で製造や使用などが規制されている。
また、環境省が公共用水域や地下水などを対象に実施した全国調査「令和2年度有機フッ素化合物全国存在状況把握調査」では、リサーチした143地点のうち、12都府県の21地点で水環境の暫定的な目標値(PFOSとPFOAの合算値で1リットル当たり50ナノグラム)の超過が確認されており、浄化対策技術の確立が求められている。
そこで、前田建設工業は、メタウォーターとともに、イオン交換樹脂を用いた水中PFOS・PFOA吸着処理システムとしてDe-POP's IONを開発した。
De-POP's IONは、「除濁装置ユニット」と「イオン交換樹脂塔ユニット」の2ユニットで構成されている。除濁装置ユニットは、処理対象水の中に含まれるPFOSとPFOAを効率良く除去する上で阻害要因となる微細な砂やごみなどの懸濁物を取り除く装置。
その後工程で利用するイオン交換樹脂塔ユニットは、PFOSとPFOAの処理専用に開発されたイオン交換樹脂が充填されており、PFOSとPFOAを効率的に除去できる。
具体的には、今回の装置は、PFOSとPFOAを含む池・湖沼や水槽などの近くまで運搬して、設置することが可能で、現地にて処理対象水のPFOSとPFOAを排除する。さらに、イオン交換樹脂の代わりに粒状活性炭を使用することや粒状活性炭とイオン交換樹脂の併用も可能な設備仕様となっており、処理対象物の水質や含まれる夾雑成分の違いによって、吸着材を使い分けられる。
加えて、循環処理法により、処理した水を外部に放流・破棄することなく、もとの池や水槽へ返送、循環処理することで、水質改善だけでなく、PFOSとPFOAを含む水の廃棄が難しい地域や水自体が貴重な資源となる地域における環境負荷の低減を達成する。
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