道路陥没の予兆を現地に行かずSAR衛星で捕捉 コスト85%減の点検手法をNTTが開発:スマートメンテナンス
NTTは、SAR衛星の電波散乱成分を解析することで、現地調査なしで道路陥没の予兆を捉える手法を実証した。発表によると、従来の車載型地中レーダー探査と比べて約85%のコスト削減が見込める。
NTTは2025年11月、SAR衛星(合成開口レーダー衛星)の電波散乱成分を解析することで、道路陥没の予兆をとらえる手法を実証したと発表した。発表によると世界初だという。
現地作業なしに効率的かつ経済的に道路陥没のリスク把握が可能に
NTTは、アスファルト層に浸透する電波を用いて地表面の状態を高頻度に観測できるSAR衛星に着目し、複数偏波の散乱成分を解析することで道路陥没の予兆を抽出する技術を開発した。道路陥没は地中空洞の形成、地盤の乱れ、地表面の凹凸といったプロセスを経て進行するが、同技術は電波の方向や強度の変化から状態を捕捉する。
地表面で反射した電波は、送信方向と同じ向きで受信される場合もあれば、反射角度が変化する場合もある。散乱の違いが、地中空洞の発生や地盤の乱れと相関する。NTTは散乱成分と陥没進行プロセスの関係をモデル化し、陥没予兆検知に応用した。
2時期の衛星データを比較することで、進展度合いも把握できる。道路下空洞の点検データとの照合により、衛星データのみで浅層部の空洞を検出できることを確認した。現地作業を伴わず衛星データのみで陥没リスク地点を抽出できるため、NTTは「従来の車載型地中レーダー探査と比べて約85%のコスト削減が見込まれる」としている。
また、光ファイバーを用いた地中の大規模空洞モニタリング技術と組み合わせることで、浅層部から深層部までの状態を補完的に監視できる。表層近くの空洞を衛星で抽出し、深層の空洞を光ファイバーで監視することで、より確実に陥没リスクを把握できる体制を整える。
道路陥没の多くは地下構造物の劣化に起因するため、従来は地下への立ち入り検査や地中レーダー探査に頼ってきた。しかし、これらは人的、費用的負担が大きく調査範囲が限定的だった。SAR衛星は地表面を定期的に広域観測できるため、数年ごとの点検では発見できない異常を早期に把握できる。新技術により、高頻度かつ面的なモニタリングが可能になる。
NTTは今後、自治体や事業会社との協力により実証実験を進める。衛星データを用いた高頻度モニタリングを点検業務に組み込み、道路維持管理の省力化と経済性向上を図る。インフラの老朽化や人手不足が深刻化する中、SAR衛星を活用した新しい維持管理技術として展開を進める方針だ。
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