ビル設備メンテ時のAI映像解析とナレッジ活用で危険検知、日立がNVIDIAとの協業でBuilMiraiに新機能:BAS
日立製作所と日立ビルシステムは、エレベーターなどのビル設備のメンテナンス作業を担うフロントラインワーカー向けに、AI Safetyソリューションを開発した。AIにマニュアルや熟練エンジニアの作業手順などを学習させ、現場技術者のウェアラブルカメラの映像をリアルタイム分析し、ガイドやアラートを出す。
日立製作所と日立ビルシステムは2025年10月10日、フロントラインワーカー向けAISafetyソリューションを開発したと発表した。
ビル設備のメンテナンス作業で、安全性や効率性の向上を目的とし、日立ビルシステムと同様に多くのフロントラインワーカーが働く日立パワーソリューションズと共同で実証を進めている。
現場作業員の貴重な知識をデータ化、AI活用で安全確保と業務効率化へ
今回開発したソリューションは、日立ビルシステムのデジタルサービス「HMAX for Building:BuilMirai(ビルミライ)」の一環として提供する。2024年に発表したNVIDIAとの協業拡大の一環という位置付けで、動画解析のAIには「NVIDIA AI Blueprint for Video Search and Summarization(VSS)」を用いる。
現場技術者が装着したウェアラブルカメラの映像をAIがリアルタイムに解析し、危険動作や手順ミスを検知して、スマートフォンの画面や音声で警告を出す安全アラート機能を備える。また、マニュアルや熟練エンジニアの作業手順などを学習させ、チャットによるナレッジ検索機能や作業ガイディング機能、報告書作成も可能にした。
2025年10月14日〜17日に開催した「CEATEC 2025」では、エレベーター昇降路内での点検時における安全支援、UPS(無停電電源装置)点検時の感電防止支援、災害時の最適派遣計画支援といった具体例も紹介した。将来は、遠隔地の上司や熟練技術者が作業映像をリアルタイムで確認し、現場に的確な指示を出せる機能の導入も予定している。
日立のビルシステム事業では、国内外で約2万6千人のフロントラインワーカーを擁し、日立パワーソリューションズも多数の現場技術者を抱えるなど、日立グループの中でも現場業務に強みを持つ。両社にとって、技術者の安全確保と業務効率の最大化は重要な経営課題となっている。
こうした課題に対応するため、日立製作所と日立ビルシステムは、HMAX for Building:BuilMiraiが提供する価値の一環で、AI Safetyソリューションの実用化に取り組んでいる。既に導入されている現場の作業効率と安全性を高める各種施策と連携させるとともに、日立ビルシステムに加え、日立パワーソリューションズをはじめとするグループ各社の豊富な製造を含む現場経験を生かしたソリューションとすることで、日立グループ内にとどまらず、世界中の現場技術者や製造現場で働く人々の働き方改革とウェルビーイング向上に貢献すること目指す。
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