CO2を吸収/固定するコンクリートで大型ブロック擁壁製造、高速道路工事に初適用:カーボンニュートラル
鹿島建設はCO2を吸収/固定するコンクリート「CO2-SUICOM」製の大型ブロック擁壁を開発し、新名神高速道路建設工事に初適用した。総延長約420メートルの法面に180個を設置し、CO2削減量は約13トン、CO2固定量は1.4トンとなる。
鹿島建設は2025年10月9日、CO2を吸収/固定するコンクリート「CO2-SUICOM(シーオーツースイコム)製の大型ブロック擁壁を開発し、新名神高速道路建設工事に初適用したと発表した。
CO2-SUICOMは、セメントの一部を高炉スラグなどの産業副産物に置き換えることで製造時のCO2排出量を抑制し、炭酸化養生の工程でコンクリートに配合した特殊混和材「γ-C2S(ガンマシーツーエス)」がCO2を吸収/固定化する。従来は小型プレキャスト(PCa)製品が中心で、部材全体にCO2を吸収させることでカーボンネガティブを達成していた。
今回、材料や配合、製造方法を見直し、大型PCa製品の製造を実現。新たな配合グレード「CO2-SUICOM(E)」を設定し、CO2吸収範囲を表層部分に限定することで、断面の大きな部材でも比較的短時間でCO2を吸収/固定可能になった。
新たに開発した大型ブロック擁壁は、従来製品に比べて1個当たりCO2を約64キロ削減し、炭酸化で約8キロを吸収/固定。これにより、合計約72キロのCO2を削減する。今回の高速道路工事では、総延長約420メートルの法面に180個を設置し、CO2固定量1.4トン、CO2削減量約13トンの効果が見込まれる
鹿島建設は今後もCO2-SUICOMの製品ラインアップや製造拠点を拡充し、多様な工事への適用を進めていく。
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