竹中工務店が示した「働く人を幸せにする現場」 点検モノレールから日本初上陸の健康ドリンクまで:第10回 JAPAN BUILD OSAKA(3/3 ページ)
竹中工務店は建設現場を支える技術革新と同時に、そこで働く職人や協力会社の健康/安全を守ることにも重点を置く。その姿勢は「建物は人がつくるもの。職人が安心安全でなければ良い建築は生まれない」という理念に基づく。「第9回 JAPAN BUILD OSAKA」の出展ブースに並んだ製品群は、その考えを体現するものとして、最新の点検用ロボティクスから健康支援アイテムまで幅広く披露した。
作業員の体調を守る吸湿速乾インナー
ブースでは、建設作業員の快適性を支援するアイテムも展示した。ヴォイスが竹中工務店の監修のもと開発した吸湿速乾インナー「くっつ汗(かん)」はその1つ。
インナーは特殊な生地構造により、汗を素早く外へ逃がし、肌に張りつきにくい。一般的な生地と比べて1.5倍のひんやり感が得られるとされ、UVカット機能や速乾性も備えている。近年普及しているファン付き作業着のインナーとして着用すれば、清涼効果がさらに高まる。
生地は台湾で糸から製造し、ベトナムの自社工場で縫製している。販売開始は2026年春の予定で、現場ニーズに応じて半袖/長袖/タンクトップに加え、女性作業員向けのバリエーションも展開する計画だ。
アメリカ発、日本初上陸の健康ドリンク「Bobelo」
さらに、健康支援の取り組みとして紹介したのが、アメリカ発の粉末飲料「Bobelo」だ。砂糖や人工甘味料、着色料を一切使用せず、天然由来の甘さで飲みやすい。電解質を含み、厚生労働省が定める熱中症対策飲料の基準も満たしている。
粉末スティックを水に溶かす方式のため、ペットボトルのゴミが出ない点も現場に適している。価格は自販機のスポーツドリンクと同程度を想定しており、2025年秋の日本初上陸を目指している。展示会場での試飲では「自然な甘さで飲みやすい」と好評を得ていた。
味のバリエーションは、パイナップルココナッツ、ブラックチェリー、青りんごがブースに用意されていた。筆者も試飲したが、さっぱりとした甘みと微炭酸が飲みやすくおいしかった。
竹中工務店は、現場の職人や協力会社の社員が健康を保ちながら働ける環境づくりを重視しており、Bobeloの導入はその一環。スポーツドリンクや麦茶に頼りがちだった水分補給を、より健康的かつ持続可能な形へと転換する狙いがある。
DXの先にある「人を中心に据えた現場改革」
第9回 JAPAN BUILD OSAKAで竹中工務店が示したのは、デジタル技術による効率化と、作業員の健康支援を両立させる姿勢だ。JPDroneのJP-Scoutやレールカメラは、人が入れない場所や危険区域での作業を代替し、安全性と効率を高める。センシンロボティクスのクラウド管理システムは、現場の「見える化」を進め、ペーパーレス化によって管理精度を高める。そして吸湿速乾インナーやBobeloといった製品は、現場で働く人々の体調を守る。
いずれも単体の製品紹介にとどまらず、「建物をつくる会社」から「働く人を幸せにする会社」へという竹中工務店の姿を鮮明に映し出している。建設業界が直面する人手不足や高齢化の課題に対して、デジタルと健康支援の両輪で取り組む姿は、DXの本質を「人を中心に据えた現場改革」として提示するものだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ロボット:建設ロボ分野のソフトウェア開発基盤を共同研究、竹中工務店など6社
竹中工務店は、Kudan、ジザイエ、アスラテック、燈、センシンロボティクスと共同で、建設ロボティクス分野のソフトウェア開発基盤の研究開発に着手した。
プロジェクト:「築地再開発」は9000億円を投じ、5万人収容スタジアムや高さ210mのホテルなど9棟建設
築地再開発が2030年代前半の開業を目指し、本格始動する。計画では、9000億円を投じ、5万人収容のスタジアムやライフサイエンス/商業複合棟、高さ210メートルのホテル棟など9棟を建設する。設計は日建設計とパシフィックコンサルタンツ、施工は鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店が担当し、2030年代前半に第一期の街びらきを目指す。
デジタルファブリケーション:鉄道廃レールを金属3Dプリンタで6.2×1.5mのベンチに再生 竹中工務店
竹中工務店とJR東日本は、JR大阪環状線「弁天町」駅に、鉄道の廃レールを利用して金属3Dプリンターで製作した「ルーレベンチ」を設置した。
第7回 国際 建設・測量展:フル電動クレーンを屋内から操作デモ タダノが竹中工務店やアルモと実用化
タダノは、バッテリーを動力源としたフル電動のラフテレーンクレーンを2023年12月に世界に先駆けて実用化したメーカー。電動ラフタークレーンは、日本を起点に、北米、欧州、豪州へと、グローバルで建機の脱炭素化を展開している。CSPI-EXPO2025では、環境対応をさらに進め、竹中工務店などと本格運用を目指す、まだ日本にはない移動式クレーン遠隔操作技術を披露した。
ロボット:3D位置情報で建設現場ロボットが自律移動、業務時間3割削減 竹中工務店など
竹中工務店とNTTドコモビジネス、アスラテックは共同で、建設現場のロボット運用システム「ロボットナビゲーションシステム」を開発した。空間IDを活用し、3D位置情報によるロボットの自律移動を可能にした。


