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“はかる”技術でドローン測量を進化させてきたアミューズワンセルフの歩み第7回 国際 建設・測量展(2/3 ページ)

ドローン搭載型レーザースキャナーや長時間飛行の機体を開発するアミューズワンセルフは、「はかる」を生業とする技術開発企業だ。量を“測る”だけでなく、課題解決の作戦を“図る”までを含め、2001年の創業以来、400件超の自社開発を積み上げてきた。そのため、自らを「問題解決企業」と位置付ける。現在の主力事業となるドローン分野に踏み出す契機となったのは、近年頻発する自然災害での被災地測量だったという。

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SfMを超える精度と突破力のレーザーシステム

 続いて冨井氏は、ドローン搭載型レーザーシステムの必要性に言及した。近年、ドローンに標準搭載された高性能カメラを使い、撮影画像から立体モデルを生成するSfM(Structure from Motion)技術が普及している。

 だが冨井氏は「工事現場では有効な方法だが、測量では限界がある。測量は地面を測る仕事だ。SfMでは樹木の上部は捉えられても、樹冠下の地表までは測れない。地表面まで確実に捉えるためには、毎秒数十万〜数百万点を照射し、多エコーを取得するレーザーシステムが必要だ」と説明した。

 冨井氏によれば、ドローン搭載レーザーシステムに求められる要件は4つ。第1に「計測スピード」。1秒間に何万回照射できるかが点群密度を決め、密度が高いほど地形の再現性が高まる。スピードが上がれば飛行速度を上げて効率化も可能だ。

 第2に「距離精度」、第3に「姿勢精度」。測定距離や機体姿勢が不安定であれば、成果物の精度は著しく低下する。

 そして第4が「手軽さ」。準備や段取りに時間がかからず、すぐ作業に入れることだ。

レーザーシステムに求められる4要件
レーザーシステムに求められる4要件

 冨井氏は「高性能でも大型で取り扱いが煩雑では普及しない。目指すのはトヨタのプリウスのように、小型で扱いやすく、普段使いできる存在」と語った。

TDOTの挑戦「“国内初”からグリーンレーザーへ」

 アミューズワンセルフのドローン搭載型レーザーシステム「TDOT」が登場したのは2013年。当時の社内調査では「国内初のレーザースキャナーシステム」とされた。

 最初はドローン一体型だったが、2015年にはユニット化を実現。翌2016年にDJIが大型ドローン「Matrice 600 Pro」を発表すると、レーザーシステムの搭載が一気に広がった。さらに同年には、最適軌跡解析をクラウドで自動処理できる仕組みも整備し、ユーザー層を拡大。2017年には計測速度を大幅に向上させた「TDOT PLUS」を市場投入した。

 そして2019年、ドローン搭載型グリーンレーザースキャナー「TDOT GREEN」をリリースする。「多くのドローン搭載レーザーシステムは近赤外線を用いるが、それでは濡れた路面や河川/海岸の水底は測れない。一方、緑色光線を用いるグリーレーザーは、水に吸収されにくく、水面と水底を同時に測量できる。雨後の濡れた路面や暗色の対象物にも対応する。理論値では、澄んだ水域なら高度50メートルから13.5メートル、100メートルからでも約10メートルの深さまで計測できる」(冨井氏)。

アミューズワンセルフのレーザーシステム開発の歴史
アミューズワンセルフのレーザーシステム開発の歴史
近赤外線レーザーとグリーンレーザーの波長の違い
近赤外線レーザーとグリーンレーザーの波長の違い

 また冨井氏は、従来主流のマルチビーム音響測深とグリーンレーザーを比較し、「マルチビーム音響測深は水質が濁っていても測れるが、浅瀬や水際では測量幅が限られ、船舶やラジコン艇が侵入できない場合もある。グリーンレーザーを搭載すれば、浅い水域や水際といったマルチビームが苦手とする領域を補完できる」と、グリーンレーザーの優位性を示した。

マルチビーム音響測深とドローン搭載グリーンレーザーの測量幅の違いを表したイメージスライド
マルチビーム音響測深とドローン搭載グリーンレーザーの測量幅の違いを表したイメージスライド

 グリーンレーザーに着目したきっかけは、国土交通省から「ドローンで地上だけでなく水底も測れないか」との要請を受けたことだ。2018年には国交省の革新的河川管理プロジェクト「陸上・水中レーザードローン」に参画し、開発に成功。2021年にはDJI「Matrice 300 RTK」に対応するバージョンが完成し、現在までに国内外で100台以上が稼働しているという。

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