南海トラフ地震にどう備えるか? 国の防災DXと企業のBCP作成の要点を内閣府が解説:第7回 国際 建設・測量展(1/3 ページ)
南海トラフ地震や首都直下地震など国難級の災害が迫る中、国は防災DXや官民連携を軸に新たな対策を進めている。CSPI-EXPO2025で内閣府の吉田和史氏が講演し、能登半島地震の教訓や南海トラフの被害想定を踏まえ、新技術と自治体をマッチングさせるプラットフォームや創設準備が進む「防災庁」などの最新動向を紹介した。民間企業には、BCP策定とサプライチェーン全体を見据えた備えを呼びかけた。
内閣府 政策統括官(防災担当)付 参事官(防災計画担当)の吉田和史氏が、「第7回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2025)」(会期:2025年6月18〜21日、幕張メッセ)の特別セミナーに登壇。「大規模災害に備える」と題し、国の防災対策の最新動向を紹介した。
自然災害は激甚化、切迫する南海トラフ地震への国の対策
吉田氏は「近年、日本では自然災害が頻発化/激甚化している」と講演冒頭、そう切り出した。
2024年1月の能登半島地震や毎年のように起こる豪雨災害。今後30年の間には南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝/千島海溝周辺型地震などの巨大地震、さらには富士山噴火など、大規模災害が高い確率で発生するとされている。自然災害への対策は、国にとっても各企業にとっても、喫緊の課題となっている。
中でも切迫性が高いのが南海トラフ地震だ。これまでの災害とは桁違いの被害が想定される巨大地震に対し、国は2024年に「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」を設置し、その対策の検討を進めている。その成果としてまとめられたのが「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ 報告書」だ。
ワーキンググループによる新たな被害想定では、震度6以上の揺れが600市町村に及び、最大34メートルの津波や約30万人の死者、約270兆円に迫る経済被害が出ると予測されている。「日本のGDPの約半分に相当する規模だ」と吉田氏は警鐘を鳴らした。
こうした被害想定に対して報告書では、行政の対応だけでは限界があると指摘している。社会全体で防災意識を高め、命を守り、生活を維持し、早期復旧を図ることが最重要課題とする。吉田氏も「津波の死者数は避難意識次第で大きく変わる」と口にし、早期避難の大切さを呼びかけるとともに、報告書の「防災対策の効果試算」を示しながら、耐震改修や家具の固定、感震ブレーカーの設置など、誰もができる身近な対策を提案した。
また、報告書では能登半島地震で浮き彫りになった避難生活の課題にも触れ、避難所だけでなく車中泊や在宅避難者への支援体制を整える必要性を訴える。その中では、物資備蓄の強化やトイレカー/ランドリーカーの導入など、福祉と民間の力を組み合わせた取り組みも検討している。
防災DXも大きな柱の一つ。マンパワー不足を補い、広域災害時の情報を効率的に集約/管理する仕組みづくりが求められている。
時間差で発生する地震への対応も不可欠としている。吉田氏は、2024年8月に出された「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を例に挙げ、時間差で起こる地震に対する国民意識醸成の重要性を強調した。
さらに吉田氏は、首都直下地震への備えにも言及。被害規模は南海トラフほどではないが、首都圏に中枢機能が集中しているため社会的影響は甚大になるとし、こちらも10年ぶりに被害想定の見直しを進めていると、国の動向を報告した。
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