3D化と空間情報解析の“下水道DX”でインフラ老朽化に挑む 八潮道路陥没で実績【Liberaware解説】:建設DX研究所と探る「建設DX最前線」(5)(3/3 ページ)
建設DXの推進を目的に建設テック企業が中心となり、2023年1月に発足した任意団体「建設DX研究所」。今回は、八潮市の道路陥没事故や能登半島地震で、ドローン調査の実績があるLiberawareが、社会問題化するインフラ老朽化を解決すべく取り組んでいる建設DXのうち、とりわけ“下水道DX”について実例を交えて紹介します。
能登半島地震の被害調査にドローン活用、見えてきた災害対応時の課題
2024年1月に発生した能登半島地震では、「日本UAS産業振興協議会(JUIDA)」と協力して輪島市の要請に応え支援活動を実施しました。IBIS2を6機持ち込み、倒壊家屋や商業施設、電力設備の内部を調査しました。その中でも自主的に被災地や避難所を訪問し、被災者の声を聞きました。避難場所で家屋内部の状態や貴重品の所在など不安を抱えた被災者の家屋内を調べ、貴重品の格納場所が破壊されていないことを確認できたなど、被災者の心理的負担の軽減にも貢献できています。
倒壊家屋に人が立ち入らずに内部確認ができることで、調査の迅速化と安全性が確保されます。警察や消防による救出活動に役立つだけでなく、罹災証明書の発行や保険手続きにも有効となると分かりました。
今回の支援では初日は行政や消防などからの具体的な飛行要請がなく、ドローンの有用性や活用方法が現場で十分に理解されていなかったを踏まえ、今後は行政との連携を強化し、ドローンの有用性を災害マニュアルに組み込むなど、即時活用できる体制の構築について取り組んでいきます。
AIベンダーとの連携による点検DXの共同研究
LiberawareはさまざまなAIベンダーと提携し、自動劣化診断や3D画像解析の研究も進めていきます。香港を拠点とするAI/ドローン分野のスタートアップ企業「Alpha AI Technology」と提携し、屋内狭小空間の点検技術と、AIによる屋外インフラ点検技術を融合させた統合型ソリューションの共同開発を推進予定です。
2025年3月20日に香港で行われた低空経済サンドボックスのローンチイベントにて。Alpha AI CEO デスモンド氏Desmond Ho氏(写真左から2番目)が香港特別行政区行政長官の李家超氏(写真中央)にIBIS2を説明した 提供:Liberaware
建設DX研究所への参画
Liberawareは設立当初より建設DX研究所に参画し、参画ベンダーとも協力しながら建設DXの推進に取り組んできました。これからも、建設DX研究所の主要な活動である勉強会や政策提言、情報発信を通じて、業界全体の変革に努めてまいります。
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