AI活用9%の建設業界に活路 Arentの「アプリ連携型」と「AIブースト戦略」:第9回 JAPAN BUILD OSAKA(3/3 ページ)
Arentは、建設業界に特化したDXソリューションを展開する企業だ。2023年には東京証券取引所グロース市場に上場し、建設DXをけん引する存在として注目を集めている。代表取締役社長の鴨林広軌氏は建設DXの本質は「意識せず自然に使えること」とし、建設業で広がらないAI活用に対して、BIMを基盤に対話型生成AIを業務アプリに組み込む独自戦略を打ち出す。
自然言語で設計も工程管理も自動化
Arentが展開しているAI搭載プロダクトは、その方向性を具体化している。2025年秋発売予定の「Lightning BIM AI Agent」によるRevitの自動操作デモンストレーション動画では、自然言語で「壁を作って」「窓を配置して」と入力すれば、自動で3Dモデルを生成した。
Arentが大林組と協力して開発したAI工程管理アプリ「PROCOLLA(プロコラ)」のデモンストレーションでは、PDFの図面や見積書を読み込み、工種の分類や配置順などをプロンプトで指示すると、AIが工期のバーを引いて工程表を出力。工事別の現場業務をつなぐ工程管理を効率化してみせた。
プラント設計用ツール「PlantStream AIDE」では、プラント設計でP&ID図(配管計装図)から、配管の始点から終点まで(接続リスト)を自動生成する。手動で行っていた設備機器の配置調整もプロンプトで可能になり、設計業務の省力化と精度向上を実現する。
いずれのソリューションも「AIを特別なスキルなしで使える点が共通している」と鴨林氏は説明する。
Arentが掲げる「AIブースト戦略」
鴨林氏は、こうした人間に指示するのと同じように、チャット画面から自然言語で指示してソフトを操作する取り組みを「AIブースト戦略」と呼ぶ。対話型の生成AIが業務システムに組み込まれることで、ユーザーは意識せず自然に日常の建設業務の中でAIを活用できるようになる。
世界的な潮流も同様の方向にある。自然言語でプログラミング開発できるコードエディタ「Cursor(カーソル)」は、わずか1年でARR150億円を突破し、ChatGPTを提供するOpenAI本体を上回るスピードで成長した。「AIを業務ツールに内蔵する」アプローチが、AIサービスを上回る成果を上げることを示している。
建設業界でも、BIMを基盤としたアプリ連携にAI自動化を組み合わせることで、現場の生産性は飛躍的に高まり、企業価値や競争優位性の強化につながる。鴨林氏は「AIを組み込むことで、誰もが自然にAIを使える環境を整えたい」と結んだ。
鴨林氏が語ったArentの戦略は、単なる技術導入ではなく「アプリ連携型」と「AIブースト」による業務最適化だ。ERP型の限界を超え、BIMを基盤としたデータ活用を進め、AIを日常業務に自然に組み込む。これこそが建設DXを実現する道筋であり、今後の成長戦略の核心であるといえるだろう。
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