切羽前方探査技術を全自動化、削孔から撤去まで無人化で40%省人化 大林組:i-Construction 2.0
大林組は、山岳トンネル工事における切羽前方150〜200メートルの地質を、削孔から撤去まで全自動で探査できる「水圧ハンマーナビ」を全自動化した。
大林組は2025年9月10日、日本基礎技術と共同で、切羽前方探査システム「水圧ハンマーナビ」を全自動化したと発表した。150〜200メートルの地山を約8時間で高精度に探査できる。
自動化で省人化と短時間での長距離削孔を実現
水圧ハンマーナビは、先端駆動型の水圧ハンマーを搭載した専用のボーリングマシンで、切羽前方の地質を掘削しながら探査するシステム。
一般的な切羽前方探査技術では、ロッド(長い棒状の掘削用工具)1本による削孔ごとに次のロッドを2人以上でセットし、オペレーターとの合図により接合部の接続と削孔を繰り返す必要があった。今回の自動化により、削孔からロッドの継ぎ足し、削孔完了後のロッド撤去まで一連の作業を無人化。従来5人で対応していた作業が3人で可能となり行えるようになり、40%の省人化を実現した。
新システムでは、トンネル月間進行長さを超える150〜200メートルを約8時間で削孔できる。削孔速度の調整や削孔停止、フラッシングなども自動化。山岳トンネル工事における切羽付近の肌落ち災害防止対策に関するガイドラインに沿った安全な方法による前方探査が行える。
また、ボーリング結果から独自算定するエネルギー指標値に基づき、断層破砕帯や亀裂集中帯、風化変質帯などの脆弱性を正確に把握。削孔時に削孔深度や削孔速度、送水圧、フィード圧、地山等級などがリアルタイムで確認でき、自動削孔においても不良地山が判断できる。
新システムは、日本基礎技術が開発した独自の削孔技術(A-RPD)を活用したもの。既に国道429号道路新設改良工事(榎峠トンネル(仮称)、京都府)で適用実績がある。
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