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AIエージェントが進化した「MCP」 自然言語の対話で写真から3Dモデル作成【土木×AI第35回】“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(35)(2/2 ページ)

人間の代わりにいろいろな作業を行う「AIエージェント(AI Agents)」、より自律的で自ら意思を決定する「エージェント型AI(Agentic AI)」が建設業の日常業務でも使われ始めています。議事録作成や文書作成だけでなく、外部のシステムやデータソースと接続する「MCP」を活用すれば、自然言語の対話で3Dモデリングなど、より多様な問題解決が可能になります。

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点検要領や交通量、地盤情報をデータ連携させて回答するMCPの例

 AIエージェントの進化を加速させたのが、2024年11月に米AIスタートアップ「Anthropic(アンスロピック)」が提案した「Model Context Protocol(MCP)」です。MCPは、エージェントやアプリケーション、データソースなどとの連携を標準化するためのオープンプロトコルで、「AIアシスタントを現実世界のデータやサービスにつなぐためのUSB-C規格のようなもの」と説明されています※8,9

 これまで、それぞれ個別に実装していたデータベース接続/操作やAPIコールにLLMを連携させて、自然言語的なインタフェースで取り扱えるようにするための仕組みです。これにより、システム上のデータもカバーするAIエージェントの作成が画期的に容易なものとなりました。下図は点検要領や交通量、地盤情報などのインフラや防災に関する各種データを組み合わせて回答するMCPを使ったエージェントの連携を表したものです※10

MCPによるエージェントの連携の例
MCPによるエージェントの連携の例 ※10

※8 "Introducing the Model Context Protocol"Anthropic

※9 「AI界隈”が注目『MCP』って何?──KDDI子会社の解説資料が『分かりやすい』と話題」ITmedia AI+

※10 「Model Context Protocol(MCP)のインフラ・防災分野への適用に関する検討」/AI・データサイエンス論文集(投稿中)

 検索にLLMを用いた検索拡張生成(RAG)で、自然言語で与えられた指示(クエリ)に対し、根拠のある回答を生成することが可能です※11,12。さらにMCPを利用することで、下図のようにAIが自らRAGのAPIにアクセスしたり、Web検索をしたりして得られた結果に基づき推論を進め、必要に応じてクエリを拡張して再度検索を行いながら回答を深められます。

MCPによってRAGやWeb検索を呼び出して推論する例
MCPによってRAGやWeb検索を呼び出して推論する例 ※10

※11 「大規模言語モデルの動向と利活用に向けた検討」杉崎光一,全邦釘,阿部雅人/AI・データサイエンス論文集5巻3号p220-230/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2024年

※12 AI・機械学習の用語辞典「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)とは?」@IT

 BIM/CIMで活用する3次元データモデル作成には手間や時間を要することから、生成AIで3次元データモデルを対話的に生成する方法が研究されています※13。そのような問題にもMCPは有効です。

 下図は図面や写真を利用して寸法や形状を抽出し、3Dモデル作成ソフトウェアで動作確認をしながら3Dモデルを作成するMCPの例です。CADソフトを呼び出して生成することで、生成結果を確認しつつ、対話的にプロンプトを追加して、修正しながら作成することができます。

MCPによってCADソフトを呼び出して3次元モデルを生成する例
MCPによってCADソフトを呼び出して3次元モデルを生成する例 ※10

※13 「生成AIによる単純形状3次元データモデルの対話的な生成手法の一考察」山本敦大,緒方陸,藤井純一郎,山本一浩/AI・データサイエンス論文集5巻3号p96-106/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

 LLMを用いたAIエージェントによって、より高度で複雑な作業を行うことが可能になり、MCPの登場でエージェント間の連携も自然言語で容易に実現できるようになりました。AIエージェントのさらなる発展に伴い、現実の業務への導入やDXも急速に進んでいくのではないでしょうか。

著者Profile

阿部 雅人/Masato Abe

ベイシスコンサルティング 研究開発室 チーフリサーチャー。防災科学技術研究所 客員研究員。土木学会 構造工学委員会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会 副委員長を務めた後、現在はAI・データサイエンス実践研究小委員会 副委員長。インフラメンテナンス国民会議 実行委員も兼任。

近著に、「構造物のモニタリング技術」(日本鋼構造協会編/コロナ社)。

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